国際経験の舞台は、Jリーグにゆだねられる。

   
   
U-17W杯が開幕し、いまだに日本対ブラジルでのGKのパンチングミスの残像が痛々しい中、日本対スイス戦を迎えるが、たった中二日で気持ちを上手く切り替えていられるであろうか。スイスもメキシコに勝った以上、(欧州代表ユースゆえの手抜きではなく)日本より格上と見ていい。とかく、この世代は、実力差もさることながら、主導権、イニシアチヴをいかに握れるかで試合の勝敗が決しやすい。日本は立ち上がりに失点しないことが鍵だ。もちろん、3戦全敗もありえる。いずれにしても、緊張感ある手に汗握る展開内容を望む。

そして、ひょっとすると、今回がアンダーで見られる日本代表の最後かもしれない。アンダーにベストメンバー規定はなく、日本サッカー協会は以下を決定しているという。

日本サッカー協会は23日、強化担当者会議を行い、U―20、U―17など20歳以下の日本代表招集に関して、選手がJリーグの試合に継続的に出場している場合はクラブでの活動を優先させることを確認した。

主に、クラブ主体の欧州では、この傾向が強く、イングランド、ドイツなどW杯常連国でも、ユースはクラブのサテライト中心メンバーのため、日本、韓国にコロリと負けたりする。クラブで若年強化の素地が出来ている欧州では、ユースでの強化は、必要ない。ただ、近年、スペイン、イタリア、オランダなど、各国サッカー協会がアンダーの強化に乗り出しており、既存の風潮に歯止めが掛かりつつあるかもしれない。日本は、その逆を行こうとしている。まあ、クラブ側からすれば、これはありがたいことである。フル代表、ユース代表問わず、(過去の小野のように)代表招集のリスクはクラブのみが負い、サッカー協会はノーリスクで、それでいて決定権がある。

とはいえ、時期早々か、頃合か、すでに欧州型にトライして十分なのか、その距離の図り加減は難しい。たとえば、U―20W杯で日本が優勝したとか、クラブへの弊害が大きく甚大であるという状況であるなら、この処置も適切になるのであろうが、現状だと、個人的には時期早々か、やや五分五分と見ている。ただ、ひとつ、間違いないのは、日本サッカー協会が、アンダーは五輪だけ結果を出せばいいという、メディア好み、大衆アピールという目先の利益追求という安易な方向性であるということ。


こうなると、今後の日本代表の素地は、(国際経験含め)Jリーグへと移り、U-20W杯、U-17W杯 と Jリーグの戦いになる。これがU-20W杯、U-17W杯を軽視した結果として、数年後にその影響が出てくるか、それとも、Jリーグが若年の国際経験以上の経験を積める現場になりえるかというところ。

いずれ、欧州のように、リーグとして(若年の国際舞台の経験の場に準ずるものとして)Jリーグがそうなるのを願うし、ベストを組めなくても、十分にU-20W杯、U-17W杯に出場できる層が出来上がるならいい。しかし、すこし前のACLの日本の後ろ向きな取り組みではないが、下手をすれば、U-20W杯、U-17W杯に長年、不出場という事態も十分にある。そうなると、失われた10年ということにもなりかねない。もちろん、五輪にも影響はする。五輪でアンダー軽視の馬脚が暴かれるかもしれないし、その五輪自体に出場できるかもわからない。

すでに、北京五輪で日本代表は、3戦全敗となり、(次回の五輪最終予選が)どういったレギュレーションになるかわからないが、(北京五輪の成績から判断されるシード権において)日本のシード落ちは確実であるのを知らない人は多い。実際、(前回予選に照らすと)次回は五輪最終予選で韓国、日本、イランというブロックになる可能性は普通にある。もちろん、1位のみの一カ国通過である。当然、五輪のみならず、U-20アジアユースのグループの組み合わせでも、日本のシード権はあやしい。

ともあれ、U-20W杯、U-17W杯というアンダーの舞台より、Jリーグが先に経験の場として十分な領域に行けるかというところ。同世代の外国人と相対するか、年上のプロ選手と相対するかという違いだが、日本代表の若年層の国際経験の舞台は、今後、Jリーグにゆだねられる。ほとんどの方が、Jリーグが国際経験の舞台にならないと思うであろう。だが、いずれ、欧州のように、クラブが若年ベースの強化を図り、Jリーグが(若年の国際舞台の経験の場に)ならなければならないのも未来の至上命題ではある。その試みのスタートが早いか遅いかである。個人的にはU-20W杯、U-17W杯で日本が優勝してからでもいいとは思う。いや、日本は、それ以前にアジアユースすら一度も優勝してないのだから。

最後に、現行のU-20が見られないのは残念であった。ベストメンバーで召集すると、ほぼクラブのレギュラー格になる。たとえば、大迫、原口の2トップに、左右に金崎、香川、中に山田(大竹)、ボランチに米本、GKに権田など、早々たる布陣になる。韓国、UAEが先日のU-20W杯エジプト大会で、ベスト8へ進んだが、ベスト4に行ってもおかしくはない内容だっただけに、余計にそう思う。