<選評> 日本代表 3-4 スイス代表

    
   

日本は二連敗だが、決して × というわけではない。日本の入った組は、死の組、いや、地獄の組といっても過言でない。どこかアテネ五輪の厳しかった組み分けに似ていてる(パラグアイ、イタリアの敗戦スコアも逆で同じ)。なにより、同組のブラジルの苦戦がすべてを物語っているといえよう。イラン、UAEのいるような他所の組なら、また、違う結果になっていたであろうが、とにかく、日本は、とんでもないブロックに入ってしまったというのは確かだ。

もちろん、結果がすべての世界と単純に見れば、日本はまるで駄目であるが、実際、そこまでハードルを上げる世代でもない。過去にも、このU-17はさしたる結果を残していない。五輪やU-20のように、世界トップ3に入るようなすごい世代が居たわけでもない。前々回は本大会出場すら出来ず、前回本大会でも、3試合270分のうち、ほとんどボールも触らせてもらえず、ゲームを作ることが出来なかった。むしろ、今大会は、自分たちでそれなりに意図してプレーできている点は、大いに評したい。(特に、柴崎、堀米がいることで、宇佐美のワンマンチームになっていないなど)。また、岡田監督率いる日本代表より、むしろ、(未来視点で)こっちの代表の方が気持ちが入る。


さて、試合だが、まず、FW先発起用は2試合連続でベンチの大当たり。緒戦で杉本、この試合で宮吉は当たったといえよう。しかしベンチワークの功績も索敵、初期行動までで、ブラジルに引き分けていたら、ここまで積極的にははなれてないはず。そして、ハーフタイムの過ごし方、後半の選手起用などのベンチワークは、×だった。また、(解説の清水氏も言ってたが)前半の立ち上がりのゲームプランをいかにチェンジが出来るかだったが、あまり変化はなかったのも残念。

ゲームの入り方としては、幸先よく日本が先制し、ゲームの主導権を握った。日本のU-17世代では珍しい展開だ。日本は立ち上がりに圧倒されると脆いのだが、スイスは、前の試合(メキシコ戦)で勝っているため、無理をせず静かな立ち上がりだったのも、日本に幸いした。そして、日本の先制により、スイスは相当混乱していたのもラッキー。さらに、日本は追加点を取ったが、もっと取れていたはず。日本の守備を考えれば、前半で試合を決め、スイスの息の根を止めるべきだった。しかし、そこは大人の経験不足であるU-17というところか。その後、日本の零封はありえないから、2-0はないと読んで、日本の失点の仕方、失点する時間帯を気にして見ていた。

逆にスイスは、前半はまったく手立てがなかったのだが、前半の終了間際、GKからの一本のロングフィードでラッキーなゴールを貰い、士気が上がった。0-2で前半を折り返すのと、1-2では、大きく違う。あれで彼らは生き返った。ハーフタイムをスイスはいいムードで過ごしたはず。前半終盤での反撃で、バタバタしていたメンタルも回復した。まさに、スイスがわれに返るゴールだった。(おそらく、あのまま0-2だと、同点どまりか、大差負け。)

それに対して、日本は、再び、(前半の)ゲームの閉じ方をしくじる。1点リードしていたとはいえ、日本のハーフタイムは葬式のようで、心に余裕はなかったはず。日本は、前半終了間際の失点を引きづったまま、後半に臨み、予想どうり、後半立ち上がりからスイスに圧倒される。PKは阻止したものの、スイスの流れが切れることはなく、日本特有の失点後の連続失点で、見事に逆転される。こうなると、糸の切れた蛸だ。これは、選手ではなく、ベンチの責任。

とはいえ、日本も数多くの決定機をつくり、決してスイスにすべてで負けていたわけではない。杉本、有吉、高木にそれぞれ決められるシーンはあった。特に宮吉はハットトリック出来たはず。ただ、後半の終盤を迎えると、雨が降り、人工芝で足を取られ、あげく日本はガス欠を引き起こしていた。頼みの宇佐美は、前の試合フル出場してるため、中二日では持たない。堀米までベンチに下げることになると、打つ手はない。高木はゲームの主役にはなれない。日本の守備網を考えれば、さらなる失点も。こうなると、2-4のスコアが2-5、2-6に広がらなければ御の字という視点で見ていた。

ロスタイムに日本が3点目を取った時、もったいないなと思った。色々な意味でもったいないと思った。日本がグループリーグ敗退とは。同じアジアの韓国、イラン、UAEは他組で普通に勝っている。この日本が他の組だったら…。ただ、この日本の3点目が最終的にどう影響するかはわからない。euro2004のギリシャ(のスペイン戦)ではないが、2-4で終わらず、3-4で終わらしたことが、なにかあるかもしれないし、なにもないかもしれない。

普通に考えれば、日本の決勝トーナメントは絶望的だ。グループリーグ3位でも、他の組との成績相対で決勝トーナメントに進めるが、そのためには(勝ち点4が必要で)、勝ち点3では日本の決勝トーナメント進出の可能性は、1%以下である。また、ブラジルがメキシコに負けたため、次、ブラジルがスイスに負けて、日本がメキシコに勝てば、三カ国が勝ち点3で並んでの得失点差、総得点勝負になる可能性もあるにはある。この場合、他の組との成績相対の関係ない2位突破になれるが、この可能性は、むしろ0.00001%以下であろう。いずれにしても、日本は決勝トーナメントより、厳しいグループに入ったということ。そして、他の組でむざむざと敗退するなら、今回の組の3戦は、それなりに意味があり、練習試合の100試合分に相当するとポジティヴに考えるしかない。すくなくとも、それなりの未来への可能性は感じた。

さて、3戦目だが、ベストの状態でない宇佐美は先発を外してくるかもしれない。宮吉でひっぱり、宇佐美に上手くバトンできるかだ。しかし、当ブログでも今回のチームは点を取れるが、失点もすると書いてきたが、二試合で7失点はたしかにひどい。そして、5点取って、グループリーグ最下位というのも珍しい。日本の三連敗は濃厚であるが、すくなくとも、もったいないなというガックリであり、ドイツW杯のような惨めなガックリではない。かたや、韓国はU-20に続いて、このU-17でもベスト8に行きそうな勢いだ。(アンダーには力を入れない日本サッカー協会の方針と対比して)これが10年後に日韓でどのような差になっているだ。