<選評> 日本代表 1-1 ウズベキスタン代表

  

まず、水曜日の平日に55142人も客が入ったのは驚愕だ。埼玉スタジアムのロアーはもちろん、メインアッパーは満員。バックアッパー上部にやや空席が目立つくらいで、ほぼ埋まっていた。おそらく協会サイドが招待券をバラまいた?ようだが、そのせいか、家族連れ、子供がいつも以上に目立っていた。スタジアムは、寒くもなく、暑くもない。ただ、前回最終予選の北朝鮮戦のような緊迫感というものはなかった。逆に、試合中は声出しや拍手に強弱があって、わりとまともであった。

試合は、予想通り、引き分けた。ほぼ敗戦に等しい引き分けであろう。結果的にウズベキスタンに塩を送ったようなものか。闘莉王の「なんちゃってクリア」は別に珍しくないが、<展望>に書いたように「やっちゃった~」的なことが起きても、別に驚かないし、あれを得点に結びつけたウズベキスタンを賞賛したい。むしろ、ACLに出場していた選手&怪我持ちの選手を、強行して使う指揮官の責任でもある。見てる側も、ああいうのは織り込んでおかなければならない。加えて、試合終盤、浦和でもやっている闘莉王の上がり&FWは悪くないが、ああなると、「俊輔 対 ポンテ」に見えなくもない。また、日本のパワープレーも、オフサイドを怖がって、うまくないのを再認識させられた。本来、最後のパワープレーは、教えられてやるものではなく、危機感から本能で動くものだが、その根本がない。

岡崎、興梠の若手をベンチに入れたのは悪くは無いのだが、<展望>でも指摘してるように、修羅場を経験している選手を外せるほど余裕も無いはず。決めるところで決められなかった以外に、試合を決めようという気持ち・気迫がベンチから放たれていないと、なかなかゴールは生まれない。基本、ベンチから放たれるメッセージ、気持ちは、意外なほどシンプルでもあり、そのまま試合を表す鏡でもある。何をいいたいのかといえば、(選手以上に)ベンチが国際舞台での(修羅場の)経験不足なのである。尚、芝を刈り込み、水を撒いたのならば、それと同じ環境で親善試合をしておくべきであり、こちらは協会サイドのミスでもある。


ウズベキスタンを格下、勝てて当たり前と見る向きがあったが、すくなくとも、彼らはブルネイマカオではない。サウジアラビアにも勝つ実力があり、甘く見ていた趨勢の心にも隙があったのは事実。ウズベキスタンはやたらむやみに仕掛けては来ないで、取りにいける所は前へ、引くところは引き、ロングボールは使わず、危ないシーンはすべて宇宙開発クリア、攻撃はすべてサイドからのみで、非常にシンプルだった。水色、白色、緑色という(AFC公式スポンサーでもある)ファミリーマートのカラーにも似たウズベキスタン国旗が、試合中、終始、アウェイ席で振られていたが、試合後、彼らは喜んでいた。勝てたかもしれないが、負けなくてよかった安堵感と、連敗がストップし、仕切りなおせるような空気感、そして、アウェイで日本に引き分けたのが(次の日本を迎えたホームでの)自信になったのであろう。もちろん、彼らにとって、非常に難しい試合だったのを表しているのはいうまでもない。


日本を個々で見ると、内田は、悪くはないのだが、このレベルでやるには、やや判断が甘いというか、(判断が)遅い。余裕がありすぎてタッチ数も多く、良いときは良いが、全体のリズムのブレーキにもなっていた。国際基準まで達しておらず、(比べるのもどうかとは思うが)タッチ、瞬時のボールの置き方、判断において時短ができている俊輔とは一目瞭然だった。今後、我慢して使い続けるには、監督の器量次第である。長谷部は、下半身は強くなっている印象はある。チームの穴に火がついたときに見せる果敢な上がりは、浦和でも馴染みだったが、この日は、1回、右サイドをえぐったシーンがあった。<展望>でも最後に触れたが、岡崎はラッキーボーイになりそこねたか。決まっていたであろうヘッドが中沢に当たる不運。中村憲剛が使われなかったのは、川崎にとっては好都合であろう。

この試合の一押しビッグプレイは後半41:40にあった。GK楢崎とゲインリフが一対一になるシーンがあり、それを中沢が見事な腕の使い方と強靭な下半身で倒れずに阻止したシーンが圧巻だった。実際、目の前で見ていたからというのもあるが、あの数秒の中沢とゲインリフのやりとりは、思わず息を呑んだ。両方すごかった。


試合終了後のスタジアムは、突き落とされるほどの失望感には包まれておらず、観光客も混じっていたのか、むしろ、拍手が目立っていた。ウズベキスタン戦で勝ち点3を取れなかった以上、次のカタール戦が天王山になる。こうなると、思い出さないだろうか。ホーム、アウェイの違いこそあれ、最初の3戦を圧勝、引き分け、逆転負けになった97年最終予選を。今回も、そのプロセス向かっているような予感はしないでもない。次のカタールは、勝算はかなり低く、勝利のノルマを課すのは酷だ。引き分け以上で年内2位は確定するため、勝てないまでも、引き分けられるかが鍵になる。ちなみに、0-4でカタールを葬ったオーストラリアには感謝すべきかもしれない。得失点差でなんとか日本は2位に踏みとどまれた。ちなみに、カタールの大敗は(強い弱い関係なく)参考外。試合序盤に(微妙な)PK含む2点を取られ、ゲームの向き・流れがあのようになっただけ。


ちなみに、韓国はウズベキスタンとの親善試合で3-0、そして本番のUAE戦は4-1。日本はUAEとの親善試合で1-1.、そして本番のウズベキスタン戦も1-1。阪神の岡田監督は辞意を表明したが、こちらの岡田監督はどうなるだろうか?

しかし、B組はUAEが退場になり、四カ国が勝ち点4で並ぶ面白い展開である。ここにイラクと日本が入れば、まさにドーハである。