早稲田 40-0 慶応  <大学ラグビー早慶戦>

いつも秩父宮ラグビー場に来ると思うのだが、伊藤忠のビルが将棋の王将駒のように上から圧迫してくる。東南の視界がさえぎられるが、風の影響は国立競技場よりは受けにくいのかもしれない。

今日の秩父宮ラグビー場は伝統の早慶戦ということもあり、24207人の満員。平均的なJリーグの試合よりも入っているかもしれない。アマチュアであることを考えれば、すごい数字である。

昨今、マスメディアは、(阪神巨人戦を除く)野球やサッカーにおいて、たいして歴史も無いにもかかわらず、視聴者にわかりやすいという理由だけで「ダービー」というワードを使ったりしているが、この早慶戦こそ、ダービーマッチに相応しいダービーはないだろう。なにせ、1922年から始まっているのだから、その歴史は長く、かっては、対抗戦全勝の早稲田が全敗の慶応に敗れるという、ダービーならではの死闘を演じてきた。

ただ、最近の早慶戦も、30点以上のスコア、極端な大差になったりして、かってのようなロースコア、手に汗握る展開は少ない。現在は早稲田の6連勝中である。今日の試合も、前評判は早稲田有利。明治と引き分けた慶応が、どこまで食い下がるかが注目だった。

試合は序盤から慶応がお粗末な落球やらパスミスで、自分達で自滅していた。かたや、早稲田もトライを安易に欲しがってか、プレーが軽い。つまらないミスを連発し、0-0のまま膠着するが、前半13分にCTB田辺がうまいカットインから慶応DFを切り裂き、トライ。その後、早稲田がトライを重ねていくのだが、早稲田が波に乗れそうでなかなか乗れず、(前半で勝負を決めてしまうくらいの)怒涛のトライラッシュにはいたらなかったのは、もちろん、慶応が最後まで勝負を捨てず、常に気持ちを切らさなかったからであるが、やはり、この辺がダービーの力なのであろう。同じ負けるにしても、50点以上の惨敗は、さすがに恥ずかしい。

とはいえ、ゲームは早稲田が一方的に支配していた。慶応にもチャンスはあったが、ペナルティでそのチャンスをつぶし、最終的に一本もトライを取れず(PKのチャンスはあったが)0点に終わり、ほぼ完敗といっていいかもしれない。慶応の林監督も、もうすこし健闘するのかと思っていたとは思うが、これが現実なのであろう。せめて、来年の1月2日に国立まで来られたらとは思うが、今日はキャプテンでHOの金井が怪我でアウトしたのが痛かった。切り札のWTB山田も完全に沈黙してしまった。今後、強敵相手に、彼をどう活かすかを、もっとチームで練り上げた方がいいであろう。今のままではスタンドアローンでしかない。あと、敵陣、自陣問わずイージーミスをもっと少なくすること。

かたや、早稲田はSH三井が良かった。FWも全開ではないがまずまず。今年は中竹監督になっての2年目だが、彼が新任の昨シーズンはサッカー五輪の反町同様に、何も指針を施さずに放任主義を貫き、ただただ前任者・清宮の貯金を食いつぶすだけのシーズンに終わったが、今年はそこそこ戦えるチームを作ってきている。BKコンビネーションの精度向上、ラインナウトは修正の余地はあるが、関東なき今の学生相手では敵はいないであろう。今年、(関東のいぬ間に)学生Vを獲れば、今の現有戦力(豊田、山中、中濱、田辺)からの伸びシロを考えると、(関東の出来にもよるが)ひょっとすると、同志社以来の学生3連覇の可能性もあるかもしれない。

つまり、来年、再来年を見据えたチームを想像しながら見るのである。
そういうメガネで見なければ、関東の退場した今シーズンは、楽しめない。
できれば、このビッグベアーをねじ伏せる好敵手の出現を待ちたいところでもあるが。