プレイしていたが、ファイトしてない日本

まもなくオシムジャパンが誕生しようとしているが、いまさらながらワールドカップの日本代表を総括してみる。

実際のところ、日本代表は強いか弱いかといえば弱い。
ただし、ブラジル戦の1-4、オーストラリア戦の1-3の結果だけを見て、
「駄目だ、日本!弱すぎる」
なんて思うのは軽率である。ブラジルには向こう30年、手も足も出ないほどかなわないかもしれないが、オーストラリア、クロアチアには勝てた試合で、自ら自滅しただけであり、前回のトルコ戦とはなにも変わってないだけである。その辺は間違えて認識してはいけないだろう。もちろん、結果がすべてであるが、日本がオーストラリア、クロアチアに向こう30年、歯が立たないとは思えない。もちろん、スイス、ウクライナエクアドルに対してもそうである。

日本代表は強いか弱いかといえば、たしかに弱い。しかし、今、世界で日本がまったく歯が立たない(50回やっても勝てないくらい)のは、おそらくブラジル、アルゼンチン、オランダくらいであろう。圧倒的な個人技とオフェンス能力を有するチームにはまったくといっていいほど歯が立たない。これは事実である。しかし、すくなくともF組はオープンな組だった。ブラジル以外の3カ国にチャンスがあったし、オーストラリアがR16に行けたのも、戦うハートの部分が大きかったのではないか。
(基本的にF組は一位ブラジル、二位クロアチアが順当なはずである)
そういう意味で、残念なのは日本の闘う姿が前回大会より希薄になっていたことである。
(戸田のように喧嘩腰でプレイしてる選手がいなかったように思える)

「良いプレイをすれば勝てる」
たしかに良いプレイをすれば勝てるが、必ず勝てるわけではない。
ワールドカップにもなれば、いつもの良いプレイなどさせてくれやしない。
その辺の考え方の切り替えをしなければ、きっと、今後も日本は勝てないであろう。

つまるところ、日本人は上手にプレイするが、殺るか殺られるかのファイトは苦手である。
個々、感じ方は違うとは思うが、とくに川口・中田だけがファイトしていて、チーム全体から勝ちたいという死にもの狂いのファイトがこちらまで伝わってこなかったのが残念である。

戦場に行くのだから、根本的に「夢のワールドカップに出てみたい」というあこがれではなにも役に立たないことも証明された。闘うことより出ることが目的になってしまっては、なにもできやしない。そんな甘い舞台ではない。そして、それを知ったときは、すでに手遅れになっている。いつものパターンである。(だからこそジーコには長谷部、平山のような若手を登用して欲しかった。あまりにも選抜した年齢幅が狭すぎた。)
次回はワールドカップに出たい選手でなく、ワールドカップで闘える選手が多く選ばれることを望む。

また、今大会でとくに感じたのが、日本代表は闘い方が馬鹿正直すぎることである。ラテンのようなずるがしこさがない。たとえば、体のどこかを痛めたら、ピッチに寝てればいいものを、我慢して立ち上がってくる(サボることは悪しきという認識)。主審が笛を吹く前に、勝手に自己判断してプレイを止めたり、あきらめてしまう。敵のファールに対するオーバーアクションの抗議が無い。フアウルしてでも止め無ければならないところで、真面目にディフエンスしてしまう。・・・などなどだ。

それと、DFの質、決定力・シュートの精度以外に技術的には世界と世界の差はそれほど感じなかったが、ルーズボールを追いかけるスピード、球際の執念深さ、勝負すべき場面での勝負根性、そういった闘う基本が日本にはなく、そこで世界との差がかなり乖離しているように思えた。あのブラジルでさえ、闘う基本を忠実にしているだけである。

「プレイしていたが、ファイトしてない日本」
その一言に尽きるような気がする。
いまさらはじまったことではないが、親善試合であれ、公式戦であれ、試合前の日本のピッチの練習風景は、どこか学校の校庭の体育の時間を彷彿とさせてくれる。あれが軍隊のトレーニングに見えるようにならなければ、世界で真剣勝負するのは厳しいのかもしれない。

最後に、なにより残念なのは、(親日派を除いた)ドイツ国民や世界に対し、日本は出場していたかもわからないくらい何も印象を残せなかった。たしかに闘わなければ、印象に残るはずも無い。