<戦評>  日本  3-0  オマーン代表

  

幸い、気温は肌寒くてホームの日本には、よかったのかもしれない。途中から降り出した霧雨もタイミングが良かった。ただ、この試合は、負けたら監督解任のはずだが、キックオフ前のスタジアムにさほどの危機感はない。まるで(自分とは関係ない)他人事のようだ。観客も、月曜日という週はじめの平日の新横浜にしては、46762人と、かなり入った。会場が国立競技場だったら、空席は目立たなかったであろう。つくづく、会場設定は大事であると思う。

試合前の場内アナウンスでスタメンを見た時、鈴木、阿部が外れていた。山瀬、中村憲剛、今野もベンチ。よほど悩みぬいて考えたスタメンの印象を受けた。岡田監督らしく、冒険するより、やや安心を買ったようなスタメンともいえよう。遠藤をボランチに下げたことで、前の中村と被らず、パスが回り、かつ、松井の持ち味も引き出せる。そして、試合は、(途中、パス距離が間延びするときもあったが)その意図通りに通りに進んだ。

試合は、前半早い時間に先制点が入るかがすべてであった。開始二分に玉田がビッグチャンスを外したので、すこし嫌な気がした。序盤のビッグチャンスを外すと、その後、いくらチャンスがあっても、入らないことが多い。しかし、それは杞憂だった。前半10分ちょうどで、CKのセットプレーから、中澤のヘッドで先制した。この時点で、点が取れずにずるずる行く最悪のパターンは回避された。

その後、トップに張り出た闘莉王に中村が気づき、フィード。そのフィードから落としたボールに大久保がごっつあんゴール。なんだか、上手く行き過ぎて怖い気がした。しかし、今日のオマーンは、どこか中途半端だった。完全なドン引きにはならず、最終ラインは5人でラインを高く保っていたが、守りたいのか、攻めたいのかよく分からない。オマーンは、自分たちのやりたいことの半分以下もできなかったのでは。逆に、日本は、激しくボールを取りに行っていた。今日の試合ほど、やられ役とやっつけ役がはっきりした試合もない。

3点目は、ゴールを決めた中村以上に、その前の松井のフランス仕込のフィジカルを活かしたボール奪取からの突破がすべてだったといえよう。これまで、ああいったプレーが日本代表には(山瀬以外に)少なかった。そういう意味で、今の日本の個の一人かもしれない。もちろん、他に家長、田中達といった(評価されていない)個もいるが、組織だった日本のパスサッカーにあのような個のプレーが乗っかると、違う魅力とニューパワーが備わるかもしれない。闘莉王のオーバーラップもしかり。このあたりは、岡田監督は、自由にやらせているといえよう。ある意味、(職場内でのみ許された)自由なフットボールである。

とにかく、中盤のパスまわし、プレスも利き、選手にも集中力があり、結果は、快勝となった。しかし、快勝しないと、世論は納得しなかっただろう。なんとも贅沢な…。

だが、このチーム、まだまだ即席である。合宿を張って、2週間ちょっと。中村俊輔が入っての2試合目でしかなく、次、今日のような内容が保障されたわけでもない。相手によって、ころころ変わってしまう日本代表に、なんら変わりはいない。ただし、この4試合の集中予選に一気にチームの形を決めることもできる。(こじつければ、後付け解釈はいくらでもできるが)今の岡田監督に細かい戦術はない。すくなくとも、戦術で選手をガチガチに縛ることもない。(国内トップレベルにある)選手のポテンシャルに委ねたオーソドックスなフットボール。セットプレーの確認と守備以外、攻撃は(ジーコ並に)ほぼ選手任せ。バランスはいいかもしれないが、ひとたびメンタルで崩れると、不甲斐なくやられる事も、先々、織り込んでいたほうがいい。今は、まだ三次予選である。

とりあえず、次のオマーンのアウェイは、0‐2、1‐3の敗戦でも、当該対戦成績で日本がオマーンを上回るため、予選は、かなり楽にはなった。次は勝てばもちろん、引き分けで(残り2試合を残して)ほぼ最終予選行きが決まる。おそらく、日本は4連勝して、結局、三次予選は5勝1敗で終えるのではないだろうか。あとは、韓国、中国の苦戦を楽しむもよし。わたしも、これで安心して、週末にユーロへ行けるというものだ。