浦和が強いという錯覚、そして、大型補強というイメージ

 

「大型補強」、「巨大戦力」、「高原優遇」、「オジェック交通事故」といったように、マスメディアによって、シーズンオフにあれこれ話題にされた浦和だが、あたかも浦和が最強であるのように報じられていて、それを真に受ける大衆がいるのも事実。たしかに、普段、サッカーを見ない人、下位クラブから見れば、羨むようなイメージかもしれないが、優勝を狙うチームとしてみると、実は台所事情に余裕はなく、アキレス腱は多い。

そもそも浦和は、大阪のような5-0で勝つフットボールでもなければ、かってのレアルマドリードのようなねじ伏せる強さはない。最近は阿部、鈴木の存在によって、苦戦しながらワンチャンスをかっさらったりする試合もあり、どちらかといえば、かっての磐田のようなしたたかさを手に入れつつある。(昔は馬鹿正直にぶつかって、玉砕していた)。また、浦和がタイトル獲得という結果を出し始めたのは、つい、ここ4、5年のことであり、弱かった時代にしても何十年も前ではなく、つい数年前である。補強では、欧州クラブのように、浦和はクラブとして当たり前の事を当たり前にしているいだけだが、どうも、日本のマスメディアの浦和の扱い方は平山同様、おいしいどこ取りの使い捨てにしか見えない。

というわけで、今季の浦和をきちんと解析してみる。

今季はエジミウソン、梅崎、高原と選手獲得に積極的で、たしかに大型補強のインパクトは強い。近藤や三都主も帰ってきた。ただ、インパクトやイメージだけが一人歩きしてしまい、実質はどうなのだろうか。保有選手が一人も流出せずに、これだけ確保したら、たしかに戦力過剰に見えるかもしれないが、実際はワシントン、長谷部、ネネ、小野といった主力級がクラブを出ている。差し引きで見れば、おそらくトントンか、(イチから連携を組み立てるとなると、)むしろマイナスになるかもしれない。(ちなみに良い補強をしたのは、大阪、名古屋、神戸である。名古屋は監督が変わるため、未知数だが、神戸も上位に顔をだしてもなんら不思議はない。)

当然、浦和にも不安要素はある。キープレイヤーで怪我しているポンテは春以降からの参戦。三都主も左足付け根痛再発で前半戦絶望。闘莉王、阿部、田中達也、高原、永井も怪我持ち。選手層は名前だけ見れば厚いが、実質は1チーム分とベンチしか人員はいない。おそらく、エメルソンの時と同様、ワシントンの存在を、ことさらに大きく感じるかもしれない。

昨日、昼間の優勝予想記事にも書いたが、そんな浦和が優勝争いできるかどうかは、前半戦、山田がトップ下で仕事できるかが鍵になる。FWについては、エジミウソンが軸。高原、永井、達也をローテして、ターンノーバーで岡野、小池、エスクデロあたりをうまくシャッフルして使うしかない。(高原がドイツ語出来るのは大きいかもしれない)。DFは可もなく不可もなくで、鈴木、阿部の働きでマッチアップのみに対応できるのは好材料だが、その二人が代表でいなかったり、試合で潰れると、崩壊する危険性も孕んでいる。夏場に外国人DFを見つけて来るそうだが、堀之内、細貝、近藤がもっとアピールすべきであろう。サイドは平川、相馬で凌ぐしかないが、相馬の裏は狙われるだろう。

とにかく前半戦のキーは前述した山田に尽きる。トップ下、もしくは左右どちらかの前で使うこと。ポンテが戻ってきても、山田が絶好調なら、ポンテはベンチに。という状況が理想。逆に、ポンテが救世主のように扱われたら、チームは相当まずい状態にあると見ていい。ニューカマーの梅崎については、今季の活躍は期待していない(五輪で頑張っては貰いたいが)。来期以降の主軸として、まず、今年は(優勝を目指すクラブでの)予習の一年になるだろう。よって、ゴールがゼロでも、かまわない。活躍したら、それは望外の喜びとしておこう。


もし、開幕ダッシュに躓いたり、勝てないで10位をうろついたりでもすれば、「あんなに大型補強したのに勝てない。」といった(アンチ浦和からの揶揄ならまだしも)勘違いした言葉が世論から溢れ出るであろう。だが、当ブログでは、そんなものは一笑に臥す。浦和が下位に低迷したとしても、すでに織り込み済みである。逆に春先から飛ばされると、むしろ不安になる。前半戦は上で2位~5位、下目処は7位~11位あたりを想定しておく。そして、夏場以降、どう盛り返してくるかである。また、秋に行われるACL決勝Tで(おそらく当たるであろう)浦項スティーラーズに勝てれば、ACL連覇は手元に手繰り寄せられるだろう。リーグより、むしろ、ACL連覇の方が確率は高いかもしれない。