<選評> 日本代表 1-1 北朝鮮代表

一言で言えば、負けなくて良かった。それに尽きる。別に負けても良かったが、正直、この代表なら、ベストの時の大阪の方が確実に強いだろう。

スタメンが羽生、山岸とわかり、かなりテンションが下がった。(あくまで、彼ら元千葉枠が代表で抜きんでた存在になっていない&他にあのレベルの選手がJリーグにいるという観点で)。しかも加地が左で、レギュラーは鈴木、遠藤、中澤という、ほぼターンノーバーの面子。よって、試合前から、このチームに感情移入がしにくくなった。対戦順、一週間に3試合を考えれば仕方ないが、リスクを伴わない練習モード、チャレンジのない実験モードは否めない。岡田監督は98年のときもそうだったが、優勝や内容より、不安をひとつひとつ消去しているのである。状況が追い込まれない限り、前へは出ず、ずっとこの余裕残しのリズムで進捗するのであろう。気持ちはわからないでもないが。


「武器はないのか?武器は?」と言いたくなるくらい、(このターンノーバーした)チームには武器がない。鈴木は将棋で言えば「金」か「銀」であり、飛車角ではない。かたや飛車角といえば、山岸、羽生がその役割になるのだろうが、彼らもさほど相手に脅威を与えてはいない。桂馬と香車の遠藤、内田のみが起点になり、攻めも単調。あれでは、FWも仕事場が限られてしまう。安田が出てきたあたりあから、ぐいぐい押すことが出来たのが、材料といえるか。

個別で見ると、安田は見劣りするが、逃げずに勝負するので、(あの気持ちを買って)どんどん使って欲しい。内田ははじめてフル出場とならなかったが、すこしレギュラー定着してきた風格が付いてきたかもしれない。ただし、一線級を相手にすると厳しいのは否めない。その反面、安定感ある駒野は絶対にリスクを冒さない典型的なJリーガーであると再確認。播戸はジャンピングボレー。あれを決めていたら、ゴン襲名だったが…。また、彼の国歌斉唱がカズスタイルだったのが印象的だった。

かたや北朝鮮だが、組織的なパスワークを志すも、組み立てという部分では出来ていたり出来なかったりで、まだまだ経験の無さが伺えた。ただし、カウンターの切れ味は悪くない。荒削りなのだが、きちんとした環境でベテランの外国人監督が率いたら、化けるポテンシャルはあるだろう。しかし、あの北朝鮮のGKはひどすぎる。前にも書いたと思うが、まだ若いのか、経験不足なのか知らないが、あれでは国際大会のゴールマウスを任せるのはかなり厳しい。

日本はからくも引き分けたが、ただ、現時点において、ひとつ確実なのは、いま採ってる4-1-3-2のシステムは、格上相手だと、0-5くらいで大敗するシステムであるということ。すでに鄭大世のゴール、タイの豪快ゴールを見れば明白だ。特にマークがずれたり、攻守の切り替えが僅かでも遅れると、バイタルイエリア手前が薄くなり、相手は余裕を持ってミドルを打ち、面白いようにゴールになるであろう。おそらく、アルゼンチン、ブラジルといったミドルレンジの攻撃がぶ厚い相手だと、見事に粉砕されてしまうのではないか。あくまで、4-1-3-2のシステムは、攻めなければならない時、格下相手に挑む時に限定される。


最後に、今日の試合は、(現在、アメリカ観光旅行をしている)五輪代表をぶつけた方が、強化になったのではないだろうか。