クラブの収益格差について…

Deloitteから、毎年恒例のクラブ収益ランキングが発表されたが、すさまじい数字が出ている。一種のバブルのようだが、ハイリスクハイリターンの結果でもある。そのうち、収益を1000億に乗せるクラブが誕生するのではないだろうか。

国際的な監査法人デロイトは13日、世界のサッカークラブの2006-07年シーズン収入ランキングを発表し、スペイン1部リーグのレアル・マドリードが3億5100万ユーロ(約551億円)で3シーズン連続で「長者番付」トップになった。2位にはマンチェスター・ユナイテッドイングランド)が3億1520万ユーロ(約495億円)で昨年の4位から浮上。3位は2億9010万ユーロ(約455億円)のバルセロナ(スペイン)だった。上位20クラブを欧州勢が占めた。

10位までのランキングは以下。

レアルマドリード       Real Madrid: £236.2m
マンチェスターユナイテッド Man Utd: £212.1m
バルセロナ          Barcelona: £195.3m  
チェルシー           Chelsea: £190.5m
アーセナル          Arsenal: £177.6m
⑥ACミラン            AC Milan: £153m
バイエルンミュンヘン    Bayern Munich: £150.3m
リバプール           Liverpool: £133.9m
インテル            Inter Milan: £131.3m
⑩ローマ             AS Roma: £106.1m

(Source: Deloitteより)

欧州のクラブ収益には、UEFAチャンピオンズリーグの莫大な放映権料が大きなウェイトを占めるが、特に国内の放送権収入で潤うプレミアリーグマンチェスター・ユナイテッドが2位、チェルシーが4位、アーセナルが5位に入り、史上初めてプレミアリーグの3チームが上位5位以内に入った。それだけでなく、30位以内にも多くのプレミアリーグのクラブが食い込んでいる。これは、クラブが株式公開していたり、チケット代が割高に設定されていたり、なにより自前経営にスタンスを取っていることが大きい。

スペインの2大巨頭であるバルセロナレアル・マドリードはスタジアムの箱の大きさに加え、世界有数の都市経済による後押しがある。レアルなどは、ここ数年のオーナーによる先行投資の成功ともいえよう。もちろん、バルセロナには、バルサ会員という太い客がついている。もちろん、共に同じ街にライバルチームがあるということも見逃せない。レアル・マドリードはこの収益ランキングにおいて、3季連続首位だが、もし、彼らが去年のUEFAチャンピオンズリーグを優勝していたら、数字は上積みされていたであろう。特に一去年までは、クラブの売り出しには成功して、優勝という結果が付いてこなかったりなど、ちぐはぐな面があったが、今後、そういった乖離がさらに縮小すれば、もっと良くなるのではないか。

意外なのは、イタリア勢の健闘である。収益構造は英国プレミアリーグより酷く、Jリーグの零細体質と変わらないのだが、ミラノの2クラブやローマは、都市経済、選手の売買差益、世界規模でのグッズ展開、コアサポ層の底堅さ、スタジアムの箱の大きさでカバーしている。ミランなどは(莫大な利益を齎す)UEFAチャンピオンズリーグでの優勝が大きいだろう。また、イタリア勢はダービーが売れ線であるが、セキュリティにコストがかかることを考えると、この健闘はサプライズである。

中村俊輔のいるセルティックは1億1180ユーロ(約177億円)で17位に入ったが、UEFAチャンピオンズリーグのベスト16という結果が大きく後押ししたようだ。

一方、Jリーグからすると、欧州市場は、なんともいえない垂涎のレベルにあるであろう。とはいえ、彼らとて、特別な事をしているわけではない。あるとすれば、賭けられる資金が莫大だということでしかなく、Jリーグと収益構造はさして違わない。クラブを事業として考えると、6本柱がある。

①スポンサー収入
②チケット収入
③放映権収入
④グッズ販売その他
⑤移籍金収入
⑥賞金収入

①~④はJリーグでも収益に据えてあり、①、②などは特にアテにしている収益の柱だが、まだまだ展開が小さく細い。なおかつ、市場の構造上、⑤、⑥で大きく欧州と水を開けられてしまっている。また、自前でスタジアムを持つのは難しく、独自経営していないクラブが大半である事も、欧州と格差が付いてしまう大きな要因である。基本的にクラブ経営は投機にも似たハイリスクハイリターンであり、多様な価値のある日本において、堅実が好きなわれわれ日本人に、ハイリスクなクラブ経営は、あまり向いていないのかもしれない。

ちなみに、Jリーグトップである浦和レッズの営業収入は80億円(昨年実績)。これはJリーグではダントツの数字だが、世界ではまだ下位。とはいえ、UEFAチャンピオンズリーグといった巨大市場がなく、テレビ放映権が(分配で)独占できないとなると、健闘している数字かもしれない。今の浦和なら、指定のチケットを値上げしても、客層は太いので、びくともしないのではないか。下手な企画サービスも不要。それぐらい世界水準に批准しているが、もし、埼玉スタジアムが浦和中心部にあり、自前スタジアムとして展開できたら、(固定資産税やら維持費はすさまじいが)使用料金、広告収入など、収益の数字そのものはグロスで上がるであろう。


クラブの収益格差については、もちろん、資金力もあるが、なにより独立の自覚と(損失補填のない)きちっとした体質で、当たり前の事を当たり前にきちんとやっているかでしかない。Jリーグでは、○○な社長にいいように掻き回されているクラブをたまに見かけるが、あれなど、論外といえよう。