大きいからポストプレイヤーという時点で…

 
ACミランのMFカカの身長は186cm、73キロ。
しかし、彼をポストプレイヤーと呼ぶ者はいない。彼がワントップに張ることもない。
だが、日本人で身長が186cm、73キロあったら、確実にポストプレイヤーと呼ばれ、ワントップに使われるであろう。

もし、身長があって大きいからポストプレイヤーという認識でいたら、このあたりで欧州とは大きな差があるであろう。クリスチャーノ・ロナウドは185cm、ロニーですら181cmある。欧州は、日本ではポストプレーヤーに起用するで基準で、高速ドリブル、華麗なパスをさばいたりするのだから、どうやってもかなうはずもない。

たとえば、東京の平山相太。たしかに彼はポストプレイヤーに相応しいのかもしれないが、それはあくまで彼の選択肢のひとつであり、彼の武器としてのメインではない。彼には身長やフィジカル以外に瞬間的に放つ非凡なセンスがある。彼にパサーを組ませ、普通にFWとして使ったら、結果は、まったく違うであろう。しかし、いまだ、日本では代表でもクラブでも、彼をどう使えばいいのかすらわからないのが現状で、彼の素質はい開花していない。

長身FWといえば、他に代表クラスでは森嶋、巻、矢野がいる。森嶋は卓越したボレーセンスがあり、矢野、巻には無尽蔵のスタミナと守備への執着心がある。背が高くとも、身長のほかになにかしら特徴があるものだが、それを最大限に活かしきれているかというと、(巻、矢野はともかく)そうでもないのが、日本の現状であろう。

たしかに日本人のフィジカルは世界的にチビであり、徹底した高さ勝負で勝てないのは、ドイツW杯のオーストラリア戦でも証明された。しかし、だからといって、背の高い選手を闇雲にポストにしたところで、上手く行くはずもない。すくなくとも、日本人がポスト役が上手くハマった試合というのは、思い出してもさほどない。そもそも、そういった闘い方自体、日本人にとっては余所行きでしかない。

育成面を見ても、背が高いゆえに、逆にポジション・コンバートが遅くなってしまったり、本来の特徴を活かしきれていない場合もあるのではないか。足が速くて球の扱いが上手いから司令塔へ行かせるのではなく、その場合は、サイドも試してみる。守備が上手くて打点の高いヘッドを持ってるならば、DFにまわすのではなく、FWで使ってみたりする。つまり、指導者が選手を型にはめるのではなく、うまく特徴を引き出してやる。そういった選択の幅を広げる意識がないことには、素材や人材は不毛に消耗していくだけである。

とにかく、背が高いというのは、世界の勝負から見れば、そんなに武器にならないのである。対戦相手がベトナムやタイならいざいしらず、身長の高さを重宝する前に、個が持つ能力を引き伸ばすべきではないかと思う。