日本サッカー五輪組のポテンシャルと死角

アジアカップが終わって8月に入り、これから年末に向けて、五輪世代の戦いが始まる。本日から中国で四カ国対抗の親善試合があるが、来年の本大会の気候順応にはいいかもしれない。もちろん、五輪のアジア最終予選を勝ちあがればの話である。

五輪のアジア最終予選は、グループリーグ四カ国(カタールサウジアラビアベトナム、日本)の内、1チームしか出場権が得られないため、正直、ワールドカップアジア予選より厳しい。相手関係以上に仕組みの上で、取りこぼせないプレッシャーが意外ときつい。ようするに、不安定なチームにチャンスはなく、それでいて安定感のあるチーム以上に、勢いに任せたチームが勝ち上がることになる。ある意味、短期の一発勝負ということになる。

五輪の候補メンバーを五輪本大会まで捉えて眺めてみる。
水野、家長、本田、柏木、梅崎、森本、水本、カレン、(平山)。フル代表に呼ばれても、十分に戦力になる選手がいるし、今のフル代表にない「個」も、どちらかといえば、こちらにいる。谷口、安田などはベンチのジョーカーにもなりえるし、タレント性だけみても、過去の五輪組とは遜色ない。うまくかみ合えば、今のフル代表より可能性としては「上げ幅」があるかもしれない。

攻撃を想像すると、あれこれ湧いて来る。たとえば、水野が右サイドを突破し、梅崎、家長が左からドリブルで突破を図る。飛び道具である本田のFKもある。本職はボランチであるDF伊野波、細貝のフィードもすばらしい。水本は一対一に強い。森本・平山の相方になるであろう柏木の指揮でチームにバリエーションが生まれる。唯一、今野のような守備的ボランチの層が弱いくらいで、攻撃に関すれば、今のフル代表よりもポテンシャルは上かもしれない。もし、この素材で、五輪本大会へいけないようであれば、それは貴重な経験をする「機会の損失」であり、その責任は(誰が取るのか知らないが)かなり重いであろう。

もちろん、不安要素はある。大きく分けて3つ。

①なにより国際舞台で、(チームとして)真剣勝負の経験がまるで足りない。五輪組の過去成績は10勝3分1敗と数字はいいが、まだ、このチームは、本当の強豪と真剣勝負で戦ったことが一度もない。唯一の1敗も北朝鮮だが、北朝鮮以上の強豪はごろごろいる。なにより、本当に苦しい時に、選手が戦う心のよりどころとする何か(経験)がまるでないのである。よって、U-20がカナダで経験したチェコ戦のような経験を、これから経験しなければならない。それもぶっつけ本番になる。すくなくとも、日本フル代表がアジアカップで戦った相手(カタールサウジアラビアベトナム)がすべて五輪組の相手になる。彼等が、あのアジアカップの経験を積んでいるのは、大きなアドバンテージであり、日本には嫌な材料である。

②次に軸の不在。誰がこのチームの中心なのか。反町は軸をすえない(皆が軸といった)フレキシブルなチームにしたいようだが、実際、それは現場無視の机上の空論で、苦しい現場ではかならずリーダーは必要になる。そういう意味では、柱のない家である。監督が選んでいないのか、それとも、(野生動物の世界のように)自然と、あぶりだされないのか。

③最後に監督が新人であること。このブログでも幾度となく書いてあるが、反町は代表監督として、アジア以外での国際舞台の経験はない。オシムのように先発で押し通すタイプでもなければ、ジーコのように状況に応じて交代で流れを変えるわけでもない。これから、その型を作らなければならないのである。これも一発勝負である。白か黒か。それはわからない。ただ、山本前監督同様、選手の名前や技術ばかり見て人選し、人間そのものを見ていないようにも思える。よって、②のリーダーがいない理由もここに起因する。


今後、チームの軸として柏木を攻撃のレジスタとして据えるかどうかだが、おそらく、反町はしないであろう。そうなれば、あまり、期待しないで見た方がいいのかもしれない。むしろ、オシムの方が先に彼を呼び寄せるであろう。いや、マンUの方が先かな・・・。

今夜の北朝鮮戦は参考試合だが、立ち上がりこそ軽快で、時間と共に両者ともに動きが重くなり、最後は0-0の引き分けかか2-0で日本が勝つかもしれない。