我那覇処分は正当…FIFAが回答、その先にある視点は・・・

ドーピングをした我那覇選手への処分は、たとえWADA(世界アンチ・ドーピング機関)の規定から外れていたとしても、(組織が逃げて個人へ責任を転嫁したり、規則のための規則になりがちな風潮の中、)バランスのとれた適切な対応であった。そもそもWADAの規則・罰則などは道交法のスピード違反と同じで、あくまで人命を守るための規則・罰則でしかない。事実、このJリーグ(裁定委員)の決定に対し、国内外からの反発は皆無であるのがなによりの証左であろう。

中には、規則・罰則で決まっているから、世界的にみても「破った者は厳罰でご退場願う」といった、石頭でお役所的な意見もあるようだが、それは巨大メジャー市場や現実を無視した理想論でしかない。許容範疇ならば、規則・罰則を基本にして、あらゆる角度から臨機応変に判断・対応するのは当然である。

とはいえ、サッカー競技における本家・本元であるFIFAについては、ドーピングについてWADAに則るスタンスを取る以上、本来、(それが、たとえタテマエであっても)あらゆるケースに強硬な姿勢で臨まなければならないのだが・・・。

 ドーピング規定違反で処分を受けた川崎FのFW我那覇の問題で、FIFAの医事委員会がJリーグの判断を正当とする文書を送付してきた。Jリーグ側の問い合わせに答えたもの。6試合出場停止とチームへの1000万円の罰金を決めたリーグ側の処分を不服として、Jリーグのドクターらが処分撤回を求めているが、FIFAの回答が対応を協議しているアンチドーピング特別委員会の判断に影響を与えそうだ。

世界の全スポーツに鑑みれば、FIFAの姿勢はあきらかに適切ではない。ドーピング意識の低い&未整備のJリーグ国内の対応という事を割り引いても、お粗末である。WADAに則るという以上、本来ならば、「適切ではない」といわなければならないところだが、お膝元のFIFA(の医事委員会)がこのような見解をすることで、FIFAがWADAに則る姿勢は完全に形骸化されたといっていいだろう。むしろ、FIFAはWADAを馬鹿にしていることにもなる。だが、はじめからWADAなどには則らず、FIFA独自ルールを作ればいいだけである。MLB同様、WADAなどに100%縋らなくとも、FIFAにも独自の視点はあるのだ。

たとえば、FIFAは酸素の薄い高地の試合を中止する方向を検討しているようだが、これなど良い視点である。ドーピングであれ、なんであれ、スポーツで人の命が危険に晒される&死ぬという事態は不幸なことであり、それを防ぐために規則・罰則を作る。つまり、選手の生命を危険に晒させないという大前提があり、それが主たる目的であり、規則・罰則が選手を縛るものであってはならない。もちろん、手段が手段になり、目的が目的に摩り替わってしまうことへの回避、悪質な者については厳しい対応であることはいうまでもないが。

スタジアムに安全基準を作る傾向が出来つつあるように、今後、ドーピング以外に、高地での試合、また、気温40度以上の気候、大気汚染のひどい環境など、選手生命を脅かす環境要因は、ある程度の基準を作り、阻害していくべきであろう。ただし、罰則のための罰則にならによう、複雑な事例については、古い判例に縛られてしまう司法裁判などにゆだねるよりも、FIFAが内部に今以上の監査裁定部門を作り、独自に判断すればいい。

エクアドル、メキシコなど、高地にスタジアムを持つ国からすれば、ホームとしてのアドバンテージがなくなるため、大きな反論が出ているようだが、たとえホーム&アウェイの要素が削られても(面白みが無くなるかもしれないが)、たとえ巨大市場原理に反しても、人命を守る見地からすれば、ある種の基準を設けた方がいいであろう。そして、規則の改定以上に、状況にいかに臨機応変に対応できるかどうかがポイントになる。