<選評> ○U22-日本代表 2-0 U22-シリア代表●

予想外は歓迎である。昨日の<展望>に書いた内容の「前半」と「後半」、「日本」と「シリア」がそのまま入れ替わったような試合内容で、思わず苦笑いした。

<展望>で触れていたように、勝たなければならない試合ではないから、選手のモチベーションがある程度戻っているかがポイントと書いたが、日本チームとしての気持ちの意思統一は少なからずなされていたようだった。前半はどこか俯瞰したような雰囲気さえあった。逆にシリアのモチベーションは最低で、ほとんどチームとして合わせていないのがありありだった。体は重く、集中力も散漫で、ほぼ寄せ集め集団になっていた。よって、試合の大勢は決まっていた。ひやひやすることもなく、日本が先制するのは時間の問題だった。先制ゴールを決めた水野だが、日本のミドルレンジをシリアが放置していたため、また、彼はあれくらいやれて当然なので、あえて、ここでは褒めないことにする。(家長、水野についてはハードルを上げて見てよい二人である。利き足でないシュートはオシムからの注文とみている)

そんな温い前半より、シリアが圧してきた後半、チームとして受けてしまい、したたかに3点目を取れる雰囲気にならなかったのが残念である。とにかく、ゲームを読む力がチームとして備わっていない(この辺は試合数を積むしかない)。また、一線級相手だと、日本のDF陣はまだまだであろう。(日本は受けながらもゼロに抑えた事は材料だが)試合中、ポケットのように集中力が切れたり、馬鹿正直なセーフティがあったり、放り込まれてくるロングボールの対応がDF陣としてどうするのか出来ていない。経験を積むことでしか伸びない分、失敗は出来るうちにしておいた方が良い。

試合全体で見ると、チームの形が出来てないのは日本以上に、むしろシリアだった。(前半はなんとなくやっていて)後半からエンジンがかかりだした?シリアの前半は参考外とみるべきで、すくなくとも、去年アジア大会で闘った12月のシリアとは程遠く、まったく別のチームだった。加えて、前半で退いたシリアのGKの出来は最悪だった(後から出てきたGKの方がまとも)。むろん、シリアも最終予選にこの出来で来ることは無いだろう。すくなくとも、死のD組にいたら、まちがいなく彼らは敗退していたことは織り込んでおかなければならない。

一方、日本は青山を中心に中盤をコンパクトにして、ダイレクト、ツータッチで繋いで組み立てたため、3トップの平山システムを捨てた良い点のひとつだが、あのように平面勝負になってしまうと、平山は本当に蚊帳の外になる(おそらく李も)。いたのかほとんどわからなかったが、プチ・オシム戦術のような戦いをするこの試合に限っていえば、FWは下のカテゴリー(U-20)の青木、河原のような選手の方が向いていたのかもしれない。家長のトップ下は彼の本職でない分、まずまずだったが、この辺の人材は下のカテゴリー(U-20)から拾うしかないだろう。(それが誰かは、このブログを読んでいる方ならわかるであろう。)


なにあれ勝利して、内心、ほっとしているのは反町監督であろう。現地一週間の合宿の成果とJリーグ6節をフイにした帳尻は合わせたといっていい。だが、まだ、最終予選出場が決まっただけである。われわれも、ぬか喜びだけはしたくない。この世代の個々に(過去の日本の世代と比べて)ポテンシャルがあるのは間違いないが、この二次予選のB組は、全6組の中で最弱の部類にいることを忘れてはならない。反町としても、「あの世代を担えるのだから、どの監督がやっても結果が出て当たり前」という高いハードルを設定されているため、どのように自分の色を出していくのかが今後のポイントになる。もちろん、まだ、反町のやりたいサッカーは出てないし、あの世代のポテンシャルは十二分に引き出されているとはいえない。それでいて、(前回の山本組のように)時間はそれほどない。

7月以降はU-20のメンバーが加わってくるが、イラク北朝鮮、韓国、オーストラリア、サウジアラビアが待ち構える最終予選はもっと厳しい。(アジア大会で決勝Tへ行けなかったため)日本がシードになる保証も無い。ここは自分たちのサッカーが思うように出来ない・させてくれないステージである。とにかく、反町のやりたいサッカーがあのようなオシム戦術を齧ったようなものであれば、それはそれでいいが、今のままでは最終予選はすこし難しいかもしれない。ほぼ一発勝負になり、五輪予選敗退も現実として含んでおかねばなるまい。だが、もし、五輪出場が決まれば、最終予選突破が大きな経験となり、本大会ではベスト8へ行ってもおかしくはないだろう。