<選評> ○U22-日本代表 2-1 U22-マレーシア代表●

雨でぬかるんだピッチが双方の有利不利を大きく乖離させた試合だったが、マレーシアが金星を上げるには、それ相応の条件の揃った試合であったのは間違いない。

この試合、それまで反町監督の代名詞ならぬ定冠詞のようだった「カレン、李、平山」の3トップではなく、平山のワントップに動ける増田、ドリブラー家長の2シャドーぎみ、左右に本田と水野が開き、青山、梶山のボランチ。伊野波、水本、青山のDF陣で、GKには林を据えた。相変わらず平山との心中システムであることに変わりはないが、前の3人のFWと左右のサイドプレイヤーが前線でテイルトゥノーズに鉢合わせすることはなくなった。その分、前線で窮屈な展開にならず、サイドもそこそこ活きた。

ただ、本質は選手にシステムを与え、あとはジーコのように選手の自主性と対応力に任せる路線になにも変わりはない。10人がボールをワントップに当てる以外、どこで、誰が、どのようにしてボールを奪い、誰に預け、どこに開き、誰が犠牲になり、誰がチェックし、誰が激を飛ばし、誰が前線へフィードするのか。そういったチームとしての意図は見えてこなかった。守備も、ボールか相手が来たら個人で対応する程度で、オフサイドのひとつも取れず、(見えないところで)何度か危なくなる瞬間もあるにはあった。

試合は、本田によるCKからのグランダーに(ボールへの嗅覚のある?)平山が足元でぎこちなく押し込んで1-0。前半は早々と先制点が取れたことで、日本は早く楽になりすぎたのかもしれないが、そのまま1-0で折り返し、後半を迎える。それまで日本にも何度か決定機はあったが、あくまで個人からの打開であり、チームとしてチャンスを作り上げているわけではない。ようやく、家長のドリブル突破からのマイナスパスを李が合わせ2-0。しかし、数分後、マレーシアのFKから頭で合わせられ、マレーシアが1点返して2-1。最後は2-2になりそうな雰囲気もあったが、そこはなんとか押し戻した。

とはいえ、この日本の状態ではマレーシアに引き分けたり、負けたりしても、さして驚きはない。(近年、日本が格下から取りこぼすという試合があまりないため、そろそろ起こってもおかしくはない)。
途中、マレーシア視点で俯瞰するように試合を見ていたが、日本のファアチェックは甘く、中盤が開きすぎていて、中盤形成がなにも無い状態だった。その分、マレーシアは意外と自由にボールを持てていた。マレーシアの選手がすこしドルブルすれば、あっさりと抜けるし、下手にセンタリングやクロスなど上げなくても、バイタルエリア付近からシュートを放てば、なにか起こりそうな雰囲気でもあったし、なによりスピードある弾道のミドルシュートの精度は日本より上だった。攻撃の意図はそこそこ行き届いていたようだったが、ただ、マレーシアの「人数をかければよい」というゴール前での守備はあいかわらず、お粗末だった。

一方、日本は、香港戦よりよく見えていたが、見てくれだけで、あまり代わり映えはない。上田が入り、すこしは中盤も取り戻せた感もあったが、おそらく、今日、初めて、このチームを見た人は、昨日、緊急に集められた急造チームに見えていたかもしれない。はたまた「個人で局面を打開しろ」と監督から選手へ指示が飛んでいるかのようで、チームとしての意図、連動性、コンビネーションは皆無だった。あいかわらず、何がしたいのか、その形はピッチで見ることはなかった。また、平山と李が交代したが、平山頼みではなく、状況に合わせた戦いの指針は見えたため、今後も受けてしまう戦い方は継続するであろう。


次のシリア戦は、マレーシアに苦戦したから負けるかもしれない、ということはない。日本からすれば、香港、マレーシアよりもシリアは組みやすく、必然とモチベーションも上がり、今、U-22日本代表がパフォーマンスをもっとも発揮しやすい相手であるといえよう。たとえ日本がシリアに負けたとしても、本質はもっと別にある。そう、チームとしての形(骨格)があるかないかでしかない。