<選評> 日本代表 1-2 コート・ジ・ボワール 「格上に普通に負けたに過ぎない凡戦」

                
  
悲観する必要など何もない。同格、格下相手ならともかく、格上相手に普通に負けたのだから。これは過去記事に散々書いてきたし、少なくとも、ここの読者は、わかっていたはず。<展望>では、この試合は、コート・ジ・ボワールの出来如何次第であり、コート・ジ・ボワールの出来が悪くても、日本の出来が悪ければ、敗戦となろう。と書いたが、そっちに傾いた印象。試合天候は雨が酷く、ミストサウナの中で試合をしているようで、両チームとも動きは重く、キレはなく、ミスが目立ち、出来は良くない。試合としては退屈で、凡戦の部類。特に、コート・ジ・ボワールは、ショットが冴えない。完調だったら、5点は獲ってもおかしくはなかった。逆に、日本が完調だったら、コート・ジ・ボワールの不調、自滅と片づけられたかもしれない。

それでも、前半だけでコート・ジ・ボワールにシュート10本も打たれ、ハーフタイム時に、「20本くれてやるのか」と思ったが、試合が終わってみれば、20本前後も放たれた。不調のコート・ジ・ボワールに20本前後もシュートを打たれ、格上、格下の立場を如実に突きつけられた格好。安易にコート・ジ・ボワールに勝てると踏むのは、あきらかな誤りであったのは明白。

それで2点失点で済んだのは、ラッキーだったといえよう。また、この試合は重要ではあるが、日本が絶対に勝たなくてはならない試合ではない。負けたとしても、僅差負けであれば、次のギリシャに勝てば、望みはある。大敗もしていない。通常なら、前半のうちに同点にされているところだが、コート・ジ・ボワールのミスにも助けられ、持ちこたえて前半を1-0のまま折り返したのは立派。また、2点差、3点差にならず、1-2の1点差でゲームを終えたのも悪くはない。

むしろ、先制して、コート・ジ・ボワールを梃子摺らせたという意味では、1-2は健闘のスコアである。あくまでグループリーグの1試合でなく、3試合の勝ち点、得失点差、総得点による争いであると考えると、展開、内容はともかく、スコアだけ見れば、悪い負け方ではない。もちろん、勝つか引き分ければ理想だが、前半早々に失点したり、(ガーナのように)はっきりしなくて失点したり、凡ミスからの失点、大量得点差にならずに済んだだけマシだったといよう。つくづく、よく1点差の1-2で終えられたと思う。とはいえ、世論としては、1-1ドローでも、悲観論は漂ったであろう。それだけ趨勢の期待値は高く、コート・ジ・ボワールを、(盛りの過ぎた相手と)やや過小評価していたか。繰り返すが、コート・ジ・ボワールは勝って当たり前の相手ではない。

さて、試合だが、入り方は、悪くはないが良くもなかった。コート・ジ・ボワールが立ち上がりに慎重になってくれたから、結果、日本は、お付き合いしたに過ぎない。それはそれでよいのだが、コート・ジ・ボワールは、決して本調子ではなかった。雨に加え、湿度の高い試合で、彼らの動きは本来の切れを欠いていた。いつもなら枠に飛ぶシュートがことごとく外れていたのがその証左。残念ながら、日本も出来はよくなく、守る意識が高すぎて、相手攻撃権になると、ジリジリ下がり、慎重になり過ぎて最終ラインを上げられず、攻撃への流れが遅れていた。ゲームの入りならいざしらず、前半半ばを過ぎても、変わらなかった。むしろ、時間とともにバランスを崩して行った。最終ラインと最前線の距離が間延びしすぎて、無駄な横パスしか選択肢が無く、縦パスは通らない。展開や流れは、前半30分過ぎから試合終了まで、終始、コート・ジ・ボワールが主導権を握ったままになった。展望で20分は日本の時間はあると書いたが、その20分すらなかったのは残念だった。しいて、本田圭祐のゴール前後の7、8分だけ日本らしい攻めによる展開をした以外は、脳思考も鈍く、動きが重く、消耗していた。

特に、コート・ジ・ボワールが、両サイドバックを高く上げることで、日本の最終ラインは押し上げられない。よって、終盤の終盤でもないのに、序盤から香川、岡崎が両サイドの低い位置でディフェンスに追われ、サイドへのディフェンスに引っ張り出されては消耗し、攻撃にまで手が回らない。コート・ジ・ボワールは、日本がある程度計算してる左サイドで、普通にプレーしてきた。上がった長友の裏を取ったり、左の同サイドで浮きパスで縦にボール交換。(我々日本人が思っているほど)日本の左サイドは脅威ではないと彼らが感じたのか、「怖くも何もない」と判断したのか、むしろ、たった一回の内田の突破の方が、彼らにはヒヤリとし、脳裏に刻まれたか。長友が上がった後を使ったに過ぎない。

日本の先制点は早い必要はなく、むしろ、遅い方がよかった。前半16分の先制点は、あきらかに早すぎた。しかも、ほぼ(指摘していた)ファーストシュートだった。先制後、1-0で進んだのは日本ペースであるにはあるが、結果的に、自らの1点に縛られて、自分たちの闘い方を見失った印象。最後のパワープレーはしょうがない。これはどこの国でもそうだし。むしろ、やらなかったら、後ろでボールを回すだけに終始して試合終了に。ただ、そのための準備、人選はされていない。過去の試合でもやってない。

日本のベンチワークは親善試合の感覚だったか。まず、長谷部を交代させる前提でスタメン起用したのであれば、僅かな心の隙(心の余裕)ともいえる。最初から交代枠を1枚削っていることになり、あらゆる展開に対応する選択肢をハナから放棄してしまっている。もし、負傷者が出ていたら、どうしたのだろうか。

実際、勝っているのに、早々と先にカードを切ったのは、2006年の豪戦でのジーコとあまり変わらない。ザッケローニ監督の場合、交代させたくても、交代できない金縛りを解きたかったのではなさそうだが、流れを引き戻したい。リスクを先読みして削っておく狙いだったのか。だが、長谷部と遠藤が交代しても、さして変わり映えもなく、サイド防衛と山口の負担は変わらない。

展開次第では、自分たちのやりたいスタイルを試合中に捨てるのは選択肢のひとつだ。自分たちのスタイルに拘泥して、無理が生じた場合はそうなるし、イレギュラーな展開になると特にそれを迫られる。例えば、退場者が出たとしたら、それでも10人で自分たちの戦い方を貫けるのか。臨機応変に状況に対応できるかである。実際、コート・ジ・ボワールでさえ、終盤の10分間は、仕留めに入らず、守りと時間稼ぎに躍起だった。事実、展開と状況は、どうしても1点を守り抜いてゲームを締めるものだったが、ベンチも選手もそれを選択しなかった。選択の選択すらなかったのかもしれない。いいかえれば、イレギュラー対応の引出しが少ないという事でもある。

日本のイージーミスは3つ4つ出るであろうと<展望>に書いたが、3つ4つではなかった。寄せが甘く、フリークロスを上げさせすぎた。失点したシーンはいずれもドフリーのままクロスを放り込まれた。一対一と口で言うのは簡単だが、寄せのスピードと接点でことごとく負けていた。

個別では、特にない。(本田圭祐以外で)内田がいい目をしていた気がする。成長するためのターニングポイントになる試合となったか。メンタルで一皮剥けてくれたらいいが、それは今後のプレーに表れるし、表情に表れる。あとは、絶対に試合に勝つという信念が見えた選手と、練習通りに忠実にプレーしていた選手との乖離がやや気になった。

すでに、市井のテンションは下がっているようだが、具体的な一つの指標として、現地観戦してる人のメンタルが、「帰国したい」になっているかどうか。どこにいようとも、敗北を受け入れ、まだ終わらないと信じて切り替えるか、終戦と思って諦めるかは自由であるが、敗北の現実を無視して、安易に「切り替える」というのが一番よくない。ただし、消耗戦の反動は大きいはず。メンタルダメージがどれだけ抜けるかが次戦へのポイントになるであろう。まだ二試合もあると考えるか、もう二試合しかないと考えるか。もちろん、払拭の一番の特効薬は、相手から過小評価されて怒りを覚えることなのだが、それは期待できない。そうなると、ギリシャ戦の先制点、勝利であろう。ギリシャは、普通にやれば、普通に勝てる相手である。そのギリシャに負けるとなると、それはコート・ジ・ボワールに負けたのとは訳が違ってくる。もちろん、引き分けでも、負けに等しいのは言うまでもない。コンフェデ・アゲインとなるのか試される一戦といえよう。

先の展望に少しだけ触れておくと、日本対ギリシャ戦の前に行われるコロンビア対コート・ジ・ボワール戦が引き分けると、日本は引き分けが許されない試合になる。C組は、完全な2強2弱の構図になり、日本、ギリシャにGL突破の可能性がほぼなくなる。コロンビア勝利になると、日本はまだ、首の皮何枚か残る。特に、日本は三戦目がコロンビアであり、彼らがターンノーバーを仕掛けてくる可能性がある。そして、三戦目でコート・ジ・ボワールと当たるギリシャは、日本戦での大量得点が大事になってくる。逆に、コート・ジ・ボワール勝利になると、日本は引き分け以下が許されない苦しい状況となる。仮にギリシャに勝ったとしても、三戦目でコロンビアに勝つのは難しい。そして、コート・ジ・ボワールが三戦目のギリシャは日本に勝てば、1位抜けの可能性もあり、欲が出てくる。

とりあえず、日本がギリシャに勝つとポジティブに考えるなら、コロンビア勝利が望ましいが、ネガティヴに保険をかける視点なら、日本がギリシャに負けても三戦目に可能性が残るコート・ジ・ボワール勝利が望ましくなる。引き分けられると、コート・ジ・ボワール、コロンビアの勝ち抜けになる。

短期決戦に強い弱いは関係ない。初戦を取って気分よく流れに乗った国が有利であることは疑いはない。だが、98年大会以降、緒戦敗戦でグループリーグを突破した国はあるにはある。前回大会のスペインは優勝候補ゆえ例外としても、2002年大会のトルコはGL2戦消化で勝ち点1ながら、最後は3位、2006年大会のウクライナは、緒戦でスペインに0-4で粉砕されていながら、ベスト8と、いずれも上位へ駆け上がっている。本当に力があるチームなのか、試されていると考えればよい。ダメなら、それだけのチームだったという事。これは日本だけではない。今大会は、クロアチア、スペイン、イングランドウルグアイポルトガル、ガーナと、有力国が初戦を落としている。尚、日本も2位通過すれば、R16でコスタリカとやる可能性も少なからずある。


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