<選評> U-21日本代表 1-0 U-21UAE代表 「主力選手との融合へ」 (2010アジア大会広州)

        
    
       
11/23の記事冒頭でサッカー日本代表の獲得タイトルに触れたが、このたび、(アンダー含めた)新たなタイトルがひとつ加わった。ほとんどの方は、アジア大会がどういう大会で、サッカー日本男子がどういったスタンスで臨んでいるかは承知のはずだが、ひとまず、タイトルはタイトルである。めでたく無冠が一つ返上され、アジアで残るタイトルは、あと、東アジア選手権とU-19アジアユースとなった。今後、個人的には、やはり、準優勝の多いU-19アジアユースは獲りたいところ。しかし、過去、直近3回のアジア大会は、準優勝、GL敗退、優勝と来てるが、振り幅の落差は、激しい。つくづく短期の大会は、大会の過ごし方ひとつで、白黒大きく分かれるものである。今大会期間中、選手達が選手村で過ごしたというのも、(チームワークの)コミュニケーション向上という点では、日本を後押ししたであろう。

日本の優勝、関塚さんの手腕について賛美はすれど、半年後、すぐに五輪アジア予選があり、いつまでも喜んではいられない。それでも、ひとつフォーカスすると、関塚さん自身、クラブ時代通じての初のタイトルというのは喜ばしい。本田から鹿島とコーチ畑で来て、川崎の監督時代にリーグ2位、ナビ準優勝などを経て、ようやくの(J2優勝以外での)初戴冠を、クラブでなく、代表ベースで実現した。そして、(何度も書いてるが)代表監督としてはじめての大会で臨み、開幕から決勝までトータル7試合出来たことは、大きな収穫である。今後、五輪予選まで時間が多くないことを考えると、大きなショートカットが出来たといえよう。そして、短い時間、限られた戦力の中でのやりくりは、クラブ監督としてのノウハウが活きたのではないだろうか。


さて、試合だが、18日間で7試合目となると、かなりきつい。しかも、準決勝から中1日。さらに、決勝は、リスク許容量が下がり、地味な展開に終始するのがセオリーだが、まずまずタイトな試合になった。前半、立ち上がりは、引くでもなく、押し込むでもなく、共に、様子見で探り合う展開。前半すぐに、UAEのセットプレーが二本あったが、嫌なあそこを凌いだのは、大きい。あそこで、簡単に失点してしまうと、後がしんどくなる。UAEは、日本をスカウティングしており、山崎には囲むように二人マークをつけてきていた。(山崎は、再三、止められていたが)それでも、強引に勝負するスピリットは悪くない。<展望>でも、鍵としていた山崎の守備は、山村、山口が上がった後のケアなどで、貢献した。勿論、ボランチの上がりには、終始、永井、山崎、水沼がケアしていた。

試合でのボール保持率は、UAEの方が高いが、今大会通じての日本の戦い方は、フル代表ベースであり、むしろ、それでいい。日本の守備は、自陣中央はなんとしてでも固め、サイドでは、ある程度やられても仕方がないというわりきった戦いにすら見えた。実際、何度かグラウンダーぎみのクロスを入れられるものの、中央は人数をかけて分厚く跳ね返す。UAEの長い放り込みに対しても、落下点では、競り合いで負けなかった。前半30分すぎに日本に最大のピンチが訪れるも、UAEの宇宙開発に救われる。それ以外、日本のDFは、しっかり球際に行っており、接点でのチャージや集中力の高さは、今大会の日本の見えない特長ともいえよう。

後半立ち上がりにも、ピンチが。UAEのシュートがバーに当たり、ボールが上下に弾んで、結果的に、ボールがバーに二回当たるという珍シーン。イラン戦もそうだったが、えてして、そういった後のシュートは入らないものだ。試合展開は、そのまま0-0が続くが、延長、PKだと、すこし嫌な雰囲気もあった。UAEは延長を経験しており、出来れば、日本は90分で決着をつけたい。後半70分過ぎ、UAEが、ややスローダウンした頃合、日本が先制する。時間帯は、これ以上ないくらいに良い。決勝ゴールを決めた実藤は、クロスを受けたトラップがよかった。ボールを置いた位置が絶妙で、そのまま角度がなくても撃ち抜けた。ベンチが交代を引っ張ったのは、延長も考えての事であろうが、ロスタイムの三連続交代はしてやったりである。そして、終了間際、イラン戦を守りきった経験は、早くも、ここで活きた。これを五輪アジア予選、五輪本大会でも活かせればというところ。

チームとしては、巣立ったばかりであり、まだまだ課題や問題点はあるものの、追い風で流れが傾いている時は、無理に巻き戻さず、先送りで、そのまま行くしかない時もある。個別では、疲労と怪我の永井があそこまで走れると、後ろは助かる。大会5ゴール以上に、常に球際までフルスピードだったスタンスが、無鉄砲のようでも十分に効いていた。山村の生命線は、フィード、ロングフィードの精度であるが、攻撃が好きなせいか、展開によって、他のプレーに出来不出来があり、ボランチ周囲にスイープ役やケア役の配置は必要になろう。あとは経験だが、後半ロスタイムのGK一対一は、決めて欲しかった。今大会、大塚翔平がほとんど使われなかった。所属でも、後輩の宇佐美の後塵を拝するようになったが、なかなか厳しいか。

かたや、相手のUAEは、U-23+オーバーエイジではないが、<展望>にも書いてるように、2008年アジアユース覇者であり、2009年はU-20W杯でベスト8である。2年間、彼らは継続したチームでやってきた。2008年アジアユースのMVP&得点王のアハメド・ハリルも居る。ただ、終始、そのアハメド・ハリルがほとんど仕事をさせてもらえなかったのが、UAEには痛いところ。ひとまず、日本からすると、このUAEは、五輪最終予選で同組にはなりたくない国の一つかもしれない。(もちろん、日本は彼らとの相性自体は悪くないが)


さて、U-21日本の今後だが、まだ、始まったばかりであり、そう遠くない先を考えたい。この五輪チームの時間は、あと、一年半ほどしかなく、丸二年はない。優勝したのもつかの間、関塚さん&スタッフは、次なる仕事(五輪アジア予選)へ向かわなければならない。今大会、山村、実藤を本職のCBでなく、それぞれボランチ、SBで使ったが、山村の場合は前述している通り。実藤も、本職のCBではなく、SBとはいえ、及第点。むしろ、試合ごとに成長してる点は、見ていて頼もしい。山崎も、このU-21では、金崎や香川とのポジション争いになるが、それは所属クラブでも同じことである。(ジウ、前田とハードルの高い)磐田でスタメンを取れればというところ。

今回のU-21日本代表が、事実上のベストでなく、セカンドであった事実を、アジア各国が知らないはずはない。Bチームの日本がアジア大会を優勝したことで、五輪アジア予選に向けて、アジア各国の対日本に対する警戒レベルは、引き上げられたであろう。おまけに、五輪アジア予選で日本は第一シードに組み込まれないため、第一シードの国は、死の組になる可能性が33%となり、組合せ抽選は恐々とするのではないか。日本にしても、新たなフェイズとして、今大会の優勝メンバーと、現在、Jリーグや海外でプレーする主力選手の融合が、大きな楽しみである。その一方で、うまく融合できるかが重要なポイントになる。はたして、宇佐美、香川、金崎、米本、権田etcが、どのように嵌っていくのか。

優勝したことで、おそらく、関塚さんもいじりにくくなったかもしれないが、それでもいいかもしれない。ジャンルの違う喩えだが、大学ラグビー早大CTB今村と同じで、控や下から「もう、変えられない」主力選手が出るほうが、層の底上げになる。むしろ、フル代表のファイトモデルで闘うなら、誰がスタメン、レギュラーでも、遜色はない。ただ、先に失点した後手の展開になると、どうしても無理をしなければならなくなり、主に個人のポンシャルに依存する部分がある。その部分の人選には頭を悩ますかもしれない。また、(これは出て当たり前だが)関塚監督の好みも、今後、出てくるであろう。


最後に、まったく関係ないが、アジア大会・決勝をザッケローニ代表監督が視察していたようだ。(Jリーグなどの国内除く、アンダー日本代表の試合、ないし日本人選手出場試合における)ザッケローニ氏の海外観戦勝率は、今のところ、100%ではないだろうか。しかも、簡単ではない相手の試合ばかりで、今大会の緒戦の中国戦はもとい、長友の視察でも、たしか相手はミランだったはず。もし、そんなアノマリーがあって、密かに続くようであれば、是非、五輪アジア予選および五輪本大会も視察してもらいたいものだ。



【ここの古参・常連さんでない、初回、通りすがりの方へ】
*記事は、素人の書いた個人的かつマイノリティなメモレベルです。(兼忘備録)
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*記事内容にある予想スコア、未来予測を当てる意図はござません。(仮説設定含む)
*先の五輪予選を踏まえ、束の間の喜びは前提として、抑制して書いてます。
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