<選評> U-16日本代表 1-0 U-16東ティモール代表 「これは辛勝ではない。激勝だ。」(アジアユース2010)

     
    
      
結論から言うと、これは辛勝ではない。激勝だ。むしろ、このU-16サッカー日本代表の強さを感じた。普通であれば、引き分けで終わる試合だ。そういう流れだった。しかし、数あるチャンスを潰しながらも、ここぞという時間帯で1点をもぎ獲った。かってのフル代表の久保か大黒を思い出すが、勝って学べたのが一番大きい。こういうしんどい展開で、学んだものは、計り知れない。むしろ、こういった試合を公式戦で経験できたことに感謝したいくらいだ。くれぐれも、日本が楽勝できなかった事に不快感を感じるならば、昨日の<展望>記事を読むことをお勧めする。

もちろん、この試合に、ジャイアントキリングの匂いはあった。<展望>には、書かなかったが、試合前、ひょっとすると、東ティモールの金信煥(キム・シンファン)監督は、日本の弱点を徹底的に衝いてくるかもしれないと想定していた。すでに、U-19韓国が日本攻略のお手本を示している。日本のパスサッカーに付き合わず、ロングボールを多用し、フィデルドス・サントス、ロジェリオ・セランに合わせて、日本の最終ラインで一対一の勝負を挑めば、勝機はあると…。もし、それをやってきたら、東ティモールの選手に、それなりの計算が立っているということである。してこなければ、何をしても日本には無理という判断であろう。

しかし、この二つの想定は外れた。東ティモールは、ロングボールも使わなければ、何をしても無理という白旗でもなく、引いてしっかり守り、ボールを奪ったら、縦に急ぐ。日本の攻撃の中央と右サイドは、ほとんど制圧していた。この試合の日本の出来自体は、悪くはなく、ベトナム戦と変わりはない。ただ、運がなく、早い先制点で自分たちの流れを作れなかったに尽きる。もちろん、そうさせなかった東ティモールの奮闘は、賞賛に値する。

あと、日本に隙があったとするなら、スタメンで中盤をそっくり変えてきた事くらい。前輪と後輪を残し、エンジンだけを取り替えたようだった。これはセオリーではないが、中一日の過密日程や、実戦慣れの部分も含めたターンノーバーのフライングでもある。これは理解できる。ただ、ベトナム東ティモールを180分1試合と見据えたベンチの驕りとも取れなくも無い。それが、試合では、やや良い目には向かなかったようだ。まあ、えてしてそういうものであるし、日本が大勝、快勝するとは限らないと、<展望>では釘を刺しておいたので、ここの読者であれば、承知であろう。当ブログを読んでから、試合を見ていれば、冷静に見られたはず。個人的には、事故でもない限り、日本に負ける雰囲気は感じなかったので、引き分けでもまあ、いいかなと思って見ていた。

試合は、早く先制して楽になりたい日本と、早く90分が過ぎるように願う東ティモールとの綱引きとなった。日本は、なにもかも自分たちの思い通りだった緒戦に比べ、この試合は、その間逆で、何をしてもうまくいかない。その原因の半分は日本にあるが、そういう展開でこそ、ほんとうの地力が問われる。おそらく、東ティモールは、攻撃を削ってでも、守りに重きを置いてきているのは明白で、そういう捨て身の相手には、捨て身になるしかない。それが試合中に出来るか、試合後に気づくかで、結果は大きく変わる。

南野は、この試合で好機を外しまくったが、ストライカーは1点で十分な試合は、9本外しても、1本決めればいい。前半は、南野にボールが集まらず、得意のドリブルの機会もなく、ただ、クロスか毀れ球を待つだけの地味な仕事に終始したが、最後に決めた。FKからの岩波のシュートは枠から逸れていたが、よく、あの位置に居て合わせた。もし、あれが前半5分のゴールだったら、はにかみながらのハイタッチで済んだであろうが、あの時間に決め、苦しんだ分、控えメンバーと抱き合って輪が出来た歓喜のシーンは、この試合のクライマックスである。それと同時に、やれと言われてもできない、練習では学べない、金では買えない、なにかを学び、経験したことであろう。下手な快勝試合より、こちらの方が100倍うれしい。MVPは、南野だが、個人的にはGK中村にあげたい。

懸念を上げると、実況でも言っていたが、個々の局面で、やや勝負しに行く気持ちが欠けていたような。特に、前目の左サイドに石毛を置いたのは、ベンチの責任。チームとしても、局面、局面では、ややばたばたしていた。もうひとつ、気持ちのギアが入れられればというところ。目先を変えたり、変化をつけられるキーマン不在も痛い。このあたりは、指導者、ベンチの仕事でもある。かたや、東ティモールは、与えなくていいCKを与えたり、不要なファウルも目立ち、つまらないミスが多かったが、きちんと日本と組みあえていた。懸念されていたスタミナ不足も、0-0というスコアが彼らの集中力を維持し、気持ちを切らさなかった。<展望>に東ティモールの馴れ初めを書いたが、数年前に、彼らが道端で裸足でフットボールをしていたことを考えれば、それこそ、この0-1という内容は、奇跡であろう。


現在、U-21サッカー日本代表の方が、フル代表に近い為、たとえ、2軍、3軍のU-21であっても、それなりにニュースとして取り上げられている。逆に、サッカーU-16日本代表は、無視状態だが、U-16アジアユースで勝ち進めば、掌返しになるであろう。大会も、A組、B組が混戦に。やはり、この世代は、北朝鮮の個人能力(FK、ドリブル突破)が抜けている印象。日本が決勝まで進べば、ファイナルで当たる可能性がある。その前の準決勝はイランかウズベキスタンか。U-17W杯出場権のかかる準々決勝は1位突破だとUAE(推定)、2位突破だとイラクになるが、現在、日本は、総得点差で2位突破が濃厚だ。なんとしてでも、(勝算の薄い)イラクとの対戦は避けたい。こうなると、29日のオーストラリアには勝たなければならない。ここは、ベンチの判断次第だが、楠美+堀米がターンノーバー出来たと思いたい。

当ブログで褒め千切ると、あまり碌な事がないのだが、このU-16日本代表は、U-19日本代表よりは期待が持てる。もちろん、宇佐美のような一発逆転の大砲はなく、相手をねじ伏せる爆発力はない。ただ、負けても、ある程度、納得がいく。



【ここの古参・常連さんでない、通りすがりの方へ】
*記事は、素人の書いたマイノリティなメモレベルです。
*10/27時点の古い記事であり、最新情報と違う場合がございます。
*遠い過去記事まで読んだものとして、端折っている部分がございます。
*記事内容にある予想スコア、未来予測を当てる意図はござません。あくまで仮説設定です。