天皇杯は波乱があっていい。<浦和レッズ敗退に見る…>

     
   
今季の天皇杯は、早い段階でのJ1、J2クラブの参戦によって、どのような状況になるか注目だった。早い時期の対戦で、J1、J2が勝ち残り、(J1J2による)ナビスコ版になってもしょうがない。そして、天皇杯は、強いクラブが勝つのを楽しむというより、むしろ、下克上が魅力。弱いものが強きを挫く。それがなくなるならば、早期のJ1J2参戦は失敗ともいえる。蓋を開けてみれば、(ホンダロックは勝ったものの)JFL上位の佐川、好調の町田ゼルビア、国見のVファーレンのJFL勢も敗退した。せめて、早い段階の対戦では、格下ホーム優先の度合いをさらに強くした方がいいかもしれない。それでどうなるとでもいうわけではないが。

とはいえ、取りこぼすJ1J2クラブも中には出てくる。J1J2クラブにも事情はある。優勝・昇格争い、残留・降格争いはもちろん、リーグ終了と同時に所属外国人が帰国する事もある。中にはリーグに集中したいクラブもあるであろう。C大阪、湘南の敗退は、ややもすると、過酷な上位争いを展開するJ2終盤を睨んでのものかもしれない。

ただ、浦和の緒戦敗退はどうやっても説明がつかない。相手はJ2でもJFLでもない、(JFL、J2などの上を目指してはいるが)現在は社会人リーグの4部クラブ。浦和自身もリーグで首位争いをしているわけでもなければ、ターンノーバーしたというわけでない。むしろ(現状において出来る範囲での)ベスト布陣。とにかく、今のチーム状態(間接的に現場とフロントの乖離)のよくない点を露呈したとしかいえない。(身内だから厳しく言うが)選手も、だらだら走ってて、仕事を手抜きしてるサラリーマンのようだ。フロントはそれを見てみぬふり。チーム構成にしても、特にCB不在はどうにかしないと。山田がDFライン、SBで起用される限り、守備については常に(リターンのない)リスクのみを背負っているともいえよう。サイドを崩されても、そのまま誰も寄せずに放置してるのは、どうかと思う。どんなフットボールを指標するのはかまわないが、まずは守備。堅守からでは。

浦和の敗戦にフォーカスされやすいが、逆に、見逃してならないのは、全国地域リーグの中での北信越社会人リーグ(1部)のレベルだ。そのレベルは日本サッカーの事実上4部の社会人リーグとはいえ、(社会人の中では)決して低くはない。日本全国の地区間でレベル差にばらつきのある中、北信越社会人リーグは全国区の力を維持しており、むしろ(その枠と需要の関係から)全国より北信越内での競争が過酷であるといっても過言ではない。

松本山雅FCは、北信越社会人リーグ・四天王のひとつで、(アルビレックス新潟ご用達の)JAPANサッカーカレッジAC長野パルセイロツエーゲン金沢などと凌ぎを削り、北信越4強を形成。2008年の全国社会人サッカー選手権大会では、全国4位を遂げている。その実力は、ほぼJFLランクに準じ、普段から厳しい競争をしている背景はチームの地力基盤だ。ちなみに、AC長野パルセイロ北信越)は、2008年の全国社会人サッカー選手権大会を制している。松本山雅FCも、JFL昇格をかけた全国地域リーグ決勝大会でもグループリーグでは良い成績を残している。(少なくとも惨敗ではない)

まあ、だから、浦和が負けた。浦和が負けるのは仕方ない。とは言わないが、別に、松本山雅FCが勝っても不思議はない(競争激化の)土壌が北信越社会人リーグにはある。冒頭で述べた下克上、下層クラブがJ1J2を敗って、驚かせてくれるといいなと思っていたが、まさか、身内が負けてそうなるとは。なんとなく複雑。

    
  *記事の趣旨は松本山雅FC(北信越社会人リーグ)の激しい競争力が天皇杯で発揮されたことが(相手がどこであれ)、ややもうれしいということです。身内とは切り離してますので誤解なきように。