<選評> 名古屋 3-1 川崎 <逃した魚は大きい>

   
    

川崎の敗戦で、(浦項敗戦でボタンの掛け違いをした川崎に敗れた)大阪は浮かばれない。もちろん、名古屋が負ければ、(名古屋に敗れた)韓国王者の水原も浮かばれないであろう。とはいえ、川崎は、1stレグも名古屋のミスで勝たせてもらったようなもの。それを活かせなかった。流れも来ていたのに、なんだか、周囲をかき回すだけかき回して、サヨナラしているようだ。このACLの舞台で、中東相手ではなく、お得意様の名古屋だっただけに、逃した魚も大きいといえよう。


前週末のリーグ戦では、名古屋は鹿島に勝利し、川崎は大阪に敗戦した。これで1stレグで川崎にあった流れは寸断された。そして、イニシアチブなしのイーブンになった2nレグだが、試合の立ち上がりは、様子見の展開で、点を獲らなければならない名古屋がなかなかリスクを獲りにいけず、ジャブの応酬に終始した。

だが、小川のミドル一発で、ゲームが動く。二点目も名古屋が獲り、ゲームは激しい乱打戦に。川崎としては2失点は小川のミドルとセットプレーからであり、崩されたものではない。スコアが0-2でも、1点獲れば、延長になるし、2点獲れば、名古屋は4点獲らなければならなくなり、さほど不利ではない。案の定、川崎は二失点直後に電光石火でアウェイゴールを獲って1-2とした。これで川崎は精神的には楽になった。だが、ナビスコ含む連戦の疲れからか、後半に川崎は運動量がガクンと落ちた。(代表の戦術そのままに)憲剛が一人奮闘するものの、周囲の足が止まっていた。縦だけでなく、せめて、田中のサイドを突きまくれば、好機はあったかもしれない。

逆に名古屋は、スターターの中村、アレックスのボランチが(鹿島戦に続いて)意外と良くて、特に、中村はリスクテイカーとして、この試合の影のMVPであろう。ピクシーは、この悪くないボランチ2人を後半早々に総取替えした。攻撃的交代というより、単なるスペア交換だが、川崎の運動量が後半に落ちると読んでいたのか、これが、また、功を奏する。結局、名古屋はボランチが最後まで走りきり、巧手の切り替えが最後まで敢行できるとともに、ガス欠しなかった。

ベンチの層も名古屋の方が上だった。攻撃にはブルザノビッチ、巻、津田、杉本というジョーカー陣、守りには吉村、バヤリッツアと選択肢が豊富なのに対し、川崎は攻撃の黒津くらいしかジョーカーが居ない。これは、(シーズン中にも適材適所の補強をした)名古屋のフロントの勝利と言っていいかもしれない。やはり、なんだかんだ、フロントが現場の要望を満たす仕事をしているかである。これは、(どことはいわないが)各Jクラブも見習うべきであろう。

名古屋は、特に、これといって目に見てわかる強い容があるわけではない。得点シーンも、相手を崩すというより、セットやミドル、高さやクロスなど、槍で突くような一点攻撃がほとんどである。上を目指すには、今より更なる攻撃バリエーションが欲しいところ。鍵はマギヌンか。そして、あとは守備である。とりあえず、このACLに限っては、小川がACL男であるのは間違いない。07年の浦和の阿部、08年の大阪の山崎と、そういうACL男は必要になる。


さて、名古屋の次の相手は、W杯を逃したサウジアラビアアル・イテハド。ACL連覇した実績ある強豪クラブで、正直、名古屋には荷が重い。すでに水原、川崎というしんどい相手を倒し、なおこれから、アルイテハドとの対戦となると、かなりハードな対戦の巡り会わせといえよう。そして、もし、決勝に進んだとして、相手がウムサラルだと、(元の仲間)ダビ、マグノ・アウベスが立ちはだかる。とくに、中東勢は、今年のCWCが中東開催のため、力も入るであろう。もう、とにかく、日本勢として、名古屋にがんばってもらうしかない。国内リーグ優勝より先にアジアを獲るという飛び級制覇も可能性としてある。