<選評> オランダ代表 3-0 日本代表

     
   
 
正直、この結果に安心した。下手に日本が勝ったり引き分けでもして、(日本のメディアやベンチが)勘違いする方が性質が悪い。勝って選手が自信をつけるのか、大敗によるショック療法か。おそらく、後者を予想していた人は多かったに違いないが、虐殺には一歩足らなかった。ただ、試合後の岡田監督の顔色が、来年の6月を先取りするような表情だったのが印象的だった。日本の選手もベンチも、下手に強がらず、ショックを受けてくれて欲しい。

ちなみに、オランダの出来は、前半、後半通じて相当悪かった。逆に前半は日本が良かったからと見る向きも出来るが、実際は、そうでもない。オランダは、立ち上がりからエンジンはかかっておらず、日本のプレスにお付き合いしなかった分、入りのリズムを崩して、それをひきづったまま試合終了。しかも布陣はベストではない。前4人だけ面子を揃えて、後ろはぶっつけの若手テスト。試合途中でGKが変わってしまう「お遊び」に加え、中盤のキープレイヤーのデ・ゼーウ、ファン・デル・ファールトが後半から出てくる始末で、オランダからすれば、まさに、「テスト」「練習試合」であった。

もちろん、悪いなりに勝ちきるあたりは流石というところ。そして、彼らの日本に対する印象はほとんど何も残ってないであろう。ちなみに、この出来のオランダであれば、同日、(豪とのアジア・ナンバー1決定戦を勝った)韓国なら勝っていたかもしれない。それぐらい酷かったにもかかわらず、日本の大衆メディアは、オランダの出来の悪さにはスルーであろう。

個人的には、まず、試合前の日本の先発メンバーを見て、すこしがっかりした。岡田監督・ベンチは、アジアで戦った容がどれだけできるかの確認に行っただけで、勝負に行かなかった。リスクを取りに行かなかった。中村憲剛中村俊輔、遠藤を同時に起用しても、それは自己満足か(リスクを取らない)安心感でしかなく、相手からすると、上手いだけで怖さなど微塵も無い。もう一人のボランチも今季、試合に出ていない(怪我明けの)長谷部がフル出場である。オフェンスも、岡崎は飛び込み屋で、通常のシューターは玉田のみ。これでどう点を獲るのだろうか。砲台は何門も持ってるが、弾が一発では。

岡田監督が冒険せず保守的に行ったのは指揮官として間違った判断ではないし、このオランダという相手に、アジア最終予選の容を実際に試したかったというのもあるであろう。だが、もう、本大会への戦いは始まっている。世界との差など、確認している場合ではないはず。すでにその答えは、6月のアジア最終予選・アウェイのオーストラリア戦で出ている。それを埋めに行くにはどうすればいいかをこの試合でやってみるべきだった。何度も言うが、確認してる場合ではない。こういった練習試合で果敢なチャレンジが出来ないようでは、本番でも、自分が安心したい布陣で臨み、そこそこやれて敗退という、不完全燃焼のシーンが容易にイメージできる。この試合の敗因は、(試合前からの)ベンチのスタンスにあったといえよう。

こうなると、ガラリと変えるか、今やってることを煮詰めるかしか手はないのだが、岡田監督は、後者のようだ。いまさらやってきたことを変えるような暴挙はしないし、する勇気もないだろう。実際、あのやり方が、現時点での日本が対抗しうる精一杯の努力なのかもしれない。だが、もう、二度目のNOを突きつけられてしまったも同然である。いくら攻守の切り替えを早く、プレスして90分ファイトしても、世界トップ20での争いの中に入っていけない。


さて、試合だが、立ち上がりの5分~10分は、日本チーム内で経験の差が出ていた。遠藤はあいかわらず落ち着いたプレーで流石というところ。ブレてない。玉田、中村俊輔も普通にゲームに入っていたが、岡崎、内田、中村憲剛などはゲームの入りが遅かった。このあたり、特に、中村憲剛に国際経験を積ませたかった、中村憲剛を外したくないから、あの位置で使ってるのは分かるが、憲剛に本田、山瀬、石川のような弾道のシュートを持っていればこそのトップ下である。この憲剛を活かしたい布陣は、安心して見ていられるベンチの自己満足でしかない。

本田については、この中村俊輔中心のチームでは、やはり無理だ。過去記事に散々書いてるが、持ち味が殺される。こうなると、宝の持ち腐れか。彼と心中出来る人は、VVVの監督さんぐらいだ。


カイザース・ラウテルンで日本を数分で粉砕したヒディング氏は、のちにこう語っている。
「日本は、最初の60分は良いプレーをしていた。だが、それを過ぎると、運動量がガタッと落ちる。それをデータとしてわたしは持っていました」(←うろ覚えで正確ではない)。

まさにそれを証明してどうするというところか。チームの中心である中村俊輔は後半の後半は、ほとんど守備に追われて消えていた。アタックしてたのは長友くらいで、底を遠藤が支えていた程度。日本の収穫があるとしたら、それだけだ。もちろん、他の選手も動いていたし、必死にプレーしていたが、このステージの勝ち負けでは、厳しいところ。

さて、次はガーナ戦だが、過去に横浜国際でもオシム監督時代に負けている強豪。アシェアン、アッピアムンタリが出場してくるか未知数だが、この数日で、日本が何をどう変えてくるか注目である。下手に開き直らず、うまく吹っ切れていれば、快勝するはず。

しかし、松木が「ハンド」と言った1秒後に、失点するのは、なにかのアノマリーか。