FIFAクラブワールドカップが開幕するが・・・

本日からFIFAクラブワールドカップが始まる。全大陸のクラブ王者の参加になって、今年で三回目だが、まだまだ創成期のような印象はぬぐえず、前身のトヨタカップの未練を引きずっている感は否めない。もし、最初からミラン対ボカのワンマッチだったら、かなり注目度は高かったのではないか。

さて、FIFAクラブワールドカップを楽しみにしている方には申し訳ないが、この大会に100%本物の真剣勝負はない。前身のトヨタカップにしても、参加クラブは100%全開ではなかった上、全大陸王者参加にしてしまったことで、大会は欧州クラブのアジアツアーと同じ立ち位置になり、鑑賞試合の色合いはより強まったといえよう。普段サッカーを見ない人も含め、あくまでサッカーを楽しむための大会であり、完全なイベントであり、お祭りである。形式的には世界一を決める大会だが、いまのところ、実質世界一を決めるのは欧州のuefaチャンピオンズリーグで間違いない。

よって、選手の華麗なプレーは見られても、ガチンコの真剣勝負を、この大会の試合で見られる可能性は低い。フットボールにおけるクラブの真剣度は、サポーターの数が、そのまま本気度のバロメーターにもなる。ミランにとって、このクラブワールドカップが本当に大事な試合ならば、なによりサンシーロミラニスタが大挙、来日してなければおかしい。おそらく、イタリアにいるミラニスタは、クラブワールドカップをテレビで見ないであろう。それ以前に、彼らはミランの対戦相手すら知らないはずだ。FIFAの主催大会とはいえ、日欧ではそれぐらいに温度差がある。(誤解されるといけないので補足しますが、もちろん、ミランのクラブとしてのモチベーションはそれなりにあります)

かたや、南米代表のクラブは(経済事情で)サポーターが大挙して来日してこないが、クラブとしては、相手が欧州というだけでモチベーションが高くなる。実力がありながら、彼らは欧州という劣等感を勝手に背負い込んでいる。はたまた、欧州市場へのアピールの場と捉えている選手もいるであろう。ゆえに、大会出場クラブの中では、モチベーションが特別に高いといえる。最近は前身のトヨタカップを含め、南米代表がこの大会を制しているというのも頷ける。その他の大陸は賞金目当てか参加賞のようなモチベーションであろう。

もちろん、この大会がイベント、お祭りであれば、アジア王者の浦和にも不似合いな大会と言える。真剣勝負こそ、彼らの、(特にサポーターの)舞台であるだけに、浦和のパフォーマンス、期待値は低くなるであろう。おまけに今の浦和の調子では、セパハンはおろか、ワイタケレにも五分の闘いになるであろう。負けても驚きはない。かえすがえすも、鹿島に勝ってJ優勝を決めて、天皇杯4回戦も抜け、ポンテの怪我さえなければ、また、展開は違ったとは思う。唯一の望みは、初めてfifa主催の世界舞台に立つサポーターの意気込みになる。これがどのように作用するかが浦和の鍵になるであろう。要するに勢いに乗れるかどうかだけで、実力そのものはあまり関係ないのかもしれない。

もし、浦和が緒戦に勝つと、再びチームに勢いとリズムが生まれる可能性は少なからずある。なにより、負けてもともとという気楽さを浦和はここのところ味わっていないのである。これまで、常に緊張と疲労とプレッシャーの中でシーズンを過ごしてきた。次戦はワンマッチなだけに、ミランをリスペクトし過ぎなければ、そこそこ勝負になるであろう。もちろん、浦和が自滅して大敗もありえるし、ミランが決勝を睨んだ戦い方をすれば、浦和の金星もある。

浦和サポ以外、ミランが浦和に負けるのは誰も望んでないとは思うが、浦和は空気を読まないかもしれない。この大会が、イベントとして面白くなるかどうかは、意外と大会の水に合わない浦和次第なのかもしれない。そして、FIFAクラブワールドカップは、この大会に見合った楽しみ方をしないと、楽しめない。ひょっとすると、真剣にフットボールを愛している人には不愉快になったりするかもしれない。

最後に蛇足だが、もし、浦和がACLを逃していたら、今日のCWC開幕には鹿島が登場していたはずだった。それと、昨夜のCWC前夜祭の番組はひどかった。コストを抑えられる芸人を多用する今の制作傾向だと、軽くて安っぽくなる印象はすべてのサッカー番組にいえるかもしれない。