PK戦にならなかったイタリア対ドイツ

まず、開催国がベスト4であれば、十分な使命を果たしたといっていいだろう。
ダイスラーの離脱やDFの不安など、懸念材料が多かった戦前に比べたら、このベスト4は大きな成功であろう。もし、今回が他国の大陸の開催であれば、ドイツは客観的にうまく行ってベスト16くらいだったのではないだろうか。

もちろん、ドイツ現地の空気からすれば、ブラジル破れ、もう優勝するしかない雰囲気であったから、ここでの敗退はそれなりの落胆はあるだろうが、すくなくとも開催国の面子は保ったのだから上出来である。

イタリアも、韓国、アメリカ、オーストラリアのようなパワープレーで来るチームにはすこし苦手意識があるのかと思いきや、そこは全戦無敗相手のドイツ。試合は終始イタリアのペースで進んだ。常にイタリアのスペースを生かすフットボールが支配していた。しかし、ドイツも見事な集中力で応戦する。

常に圧してるのはイタリアだったが、結果的に開催国ドイツがなんらかのかたちで勝利をかっさらうのでは。スコアレスの展開を見ていて、正直、そう思った。イタリアも持久戦は得意ではない。網の目のようなパスワークにほころびも出始め、たびたびドイツにカウンターを喰らう。

さらに延長の立ち上がり、イタリアのシュートがバーとポストをたたき、イタリアの運の無さも感じた。
このまま0-0で延長をしのぎ、PK戦に行けば、W杯PK戦は無敗のドイツである。そして、かたやイングランド、オランダに並ぶPK戦下手糞御三家のイタリアであれば・・・ほぼ99%ドイツの勝ちだろう・・・と。

そんなシノプシスを思い描きながら見ていたが、延長後半終了間際にイタリアが先制する。
それも見事なまでの美しいシュートであった。ロナウジーニョ級のピルロのパス、グロッソのダイレクトインサイドキック、そして、宙に飛んだレーマン、揺れるゴールネット。
しかし、この失点シーンの直前にピルロの放ったミドルがあったが、ほぼフリーでやすやすと枠内へ放っていた。あの時点でドイツDF陣は集中力を切らせていたのかもしれない。あれが勝敗のすべてであったかもしれない。また、デルピエロの交代相手がトッティではなかったのはリッピの好采配であろう。

イタリアの2点目でとどめを刺されたドイツは、すでに5月30日に日本と対戦した時のドイツの姿に戻っていた。私にはあの高原の得点シーンがフラッシュバックし、デルピエロにシュートを射抜かれたレーマンのバンザイポーズは白旗の掲げにも見えた。

ただ、昔の西ドイツだったら、あの場面から追いつくような信じられない奇跡があったかもしれないと、思わないまでも無いが、ドイツにしてはこれ以上ない結果であるから、なにも恥じることは無いだろう。