またしても起こったW杯観戦ツアー中止騒動。

某旅行代理店のワールドカップツアー中止という残念な結果がまたしても起こってしまったが、これは旅行会社の認識に問題があるといっていい。観戦ツアーといっても、通常の旅行パックにチケットの値段を入れるだけの安易なサービスでしかなく、なにより、サポーターを旅行者と同じ扱いで対応しているからこのようなことが起きる。彼らは応援や観戦が主たる目的であり、観光や旅行することが本来の目的ではない。また、そんなサポーターが仕事の都合をつけ、早々とスケジュールを空けている努力を旅行代理店は重く考えていない。

あまり一般には知られていないが、実は今年のチャンピオンズリーグ決勝においても同じようなことが起こった。
某大手旅行代理店のチャンピオンズリーグ決勝観戦ツアーのチケットが当日、用意できなかった。しかも、企画したのは旅行代理店は一社だけでなく、多数の会社がひとつのチケットブローカーに委託し、多数の申込者に対し、そのチケットブローカーが用意したチケットは実に数枚だったという。もともと、ダフ屋にも枚数が出ていないくらいに市場は細く、かつチケット所有者の観戦率が高ったことが原因のようだが、当然、パリくんだりまで行って、試合をサンドニで見られなかった者は泣き寝入りするしかない。帰国の成田空港に旅行代理店の人が謝りに来ていたようだったが、代金を返済されたところで、そんなもので納得が行くはずもない。

また、企業はサポーターを怒らすと、どうなるかを本当のところよく分かってないというか、ほとんど知らないのが現状である。
たとえば、ファミリーマートの個人情報漏洩事件の口火を切ったのは、サポーターからの苦情が発端になっている。最初はそれほど公になるような規模でなく、ファミリーマートがあまり重く受け止めず、誠意ある対応を取らなかったために、サポーターを怒らせ、一気にマスコミへ漏れ、そして謝罪会見を開く羽目になった。大手広告代理店の担当者も、他のスポーツジャンルに比べると、サッカーサポーターの扱いには気を使うという。なにより、一番クレームが多いらしい。

あらゆるビジネスにおいて、直接、間接であれ、サポーターから、なにかしらの利益・金銭を取っているのであれば、サッカーを勉強し、サポーターとはどいう人種かを、まず、勉強すべきである。旅行代理店もサッカー観戦ツアーで稼ごうというのであれば、安易にブローカーなどに頼らず、きちんとした先行投資をし、スキームを確立していかなければ、今後も厳しいであろう。

一方、購入者も旅行代理店を100%信用せず、今後、代理店がどこからチケットを入手するのかの確認を怠らないようにしなければならないだろう。旅行代理店の有名、無名はあまり関係ないし、どのようにしてチケットを調達するのかを会社ごとに比較するなり、過去の実績を調べるといった努力は必要になってくる。旅行会社自体が自分の会社名で法人向けホスピタリティを購入するのであれば、まずまず信用できるが、あいにく、そういうところは価格が馬鹿高い。かといってブローカー調達であれば、やはり注意しなければならない。よくわからないところから買っていると、今回のような事が起こってしまう。

とにかく、中止になってしまったら、代金返済だけで収まるものではない。サポーターはせっかくの楽しみを奪われたのだから、その代償は何にも変えられないし償えない。サポーター相手に失敗したら取り返しがつかないことを旅行代理店は今一度、よく考えた方がいいだろう。